平安幻想異聞録-異聞- 31 - 32
(31)
ヒカルは、腕を佐為の背に回してギュッと抱きしめた。
抱きしめ返される感触があたたかい。
シュルリと衣擦れの音がして、佐為が自分の着衣をほどくのがわかる。
佐為の髪が頬にかぶって、唇に柔らかいものがそっと触れた。
つむっていた目を開くと佐為の唇だった。
「あぁ、そういえば…」
佐為が「何です?」というように首をかしげる。
「あの時、座間のやつも菅原も、オレがあんまり暴れるからって、
オレの口には触れてないんだよ。よかった。初めて唇を合わせる相手が佐為でさ」
佐為はにっこりと笑って、もう一度唇を寄せてきた。
その佐為の顔を綺麗だなぁと思いながら、口付けをうけとめる。
佐為の手が片方、腰に回って、ヒカルはそっと床に横たえられた。
佐為の舌が唇をなめるので、こそばゆくて少し口を開いたら佐為の舌が入ってきて、
ヒカルの舌をなぞるので、次にはたどたどしくそれに自分の舌をからめていた。
初めてだったけど、佐為がそうするんだから、きっと自分も同じように
返した方がいいと思ったのだ。
「ヒカルは覚えるのが早いですね」
そういいながら、佐為は器用にヒカルの着衣をはだけてしまう。
ふわりと、佐為の着物に焚きしめられた香のいい香りがヒカルを包んで、
ヒカルはそれだけで、ひどく幸せな気分になった。
自分の体の表面をやさしく佐為の手がたどる。
まるで、羽で撫でられてるみたいだとヒカルは思った。
(32)
佐為の愛撫は本当にやさしくて、その癖いつの間にか上手に追い上げられていて
ヒカルは熱い溜め息をついた。
漏れでる息は、いつしか小さな嬌声になる。
「……んっ、ん、…佐為…」
ヒカルの呼びかけに答えて佐為が、あえぎ声をつむぐヒカルの小さな唇を、
自分の唇でふさいだ。
指をからめて、互いの口の中をさぐりあう。
佐為は開いたほうの手で、そっとヒカルの膝裏を愛撫し、柔らかな膝
の裏側を撫で、足の指先まで丁寧に触れてくる。
さわさわと触れるか触れないか程度に施される愛撫は、きつく強い愛撫よりも
ずっとヒカルの体を、心を高まらせた。
「ふ……ん……佐為、ちゃんと、触って……」
やさしすぎる愛撫に、ヒカルの方がいっそ耐えきれず、催促をしてしまう。
そんなヒカルのこめかみに、佐為はひとつ口付けを落として、
太ももに触れていた手を、ゆるゆると上へと移動させてくる。
既に屹立していたヒカルのモノに近い、足の付け根の皮膚の薄いあたりを
撫でられ、ヒカルはじらされているような、むずがゆいような、
不思議な感覚にさいなまされて、思わず鼻にかかった甘い声を上げていた。
ヒカルの喉からその声を引きだして満足したのか、今度は、足の付け根を
やさしくなぶっていた佐為の手が、スッとまだ幼いヒカル自身に添えられる。
「ぁん……」
佐為の、女もかくやというほど細くて綺麗な白い指が、自分のそんなところに
絡まっていると考えただけで、ヒカルは体中が熱くなる。
そうやって、もうこれ以上は我慢できないかもと、哀願を始める寸前まで追いつめられて、
その後に佐為が中に入ってきたときも、痛みよりも異物感よりも、
ただただ気持ちがよくて、気がつけば、もっと、と佐為にすがりついていた。
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