闇の傀儡師 31 - 35


(31)
「う、うう、くう…」
あと僅かに力がかかればその部分に木の刃が食い込んで皮膚が裂けそうで、
全身に冷や汗を滲ませ、カタカタと震わす。
時間が経つにつれて足首に重りがずしりと食い込み、その分局部への痛みが増大していく。
「はあ…、あ…」
ヒカルは貧血を起こし、ふらりと横に倒れそうになった。
だが男の手に支えられ、ぐらついた体を真直ぐに直される。
その時ヒカルの体を抱く男の手が腰に回って力が入り、若干ヒカルの体が上に持ち上げられた。
局部への体重のかかりが減り、ヒカルがホッと息をついたとたん、男の手が離れた。

「ぐあああっ!!!」
凄まじい程のヒカルの悲鳴にアキラは驚き、今度はどの部分を責められているのか
ヒカルの体を探った。
「まさか…」
アキラはヒカルの両足の間に回り、そおっとそこを開いた。
「なんて事を…!」
既にその部分は縦に線を引いたように赤く盛り上がり、ところどころ血を滲ませていた。
「うああっ、かはああっ!」
再度ヒカルが狂ったように叫び、びくんびくんと全身を痙攣させた。


(32)
木馬の刃の上で数回体を持ち上げられて落とされ、ほぼヒカルは失神しかけていた。
「もう一度だけ返事を聞いていいかい。」
男の声が耳元で囁く。もうだめだ、耐えられないと思った。
何故か木の刃の上でヒカル自身が勃ちあがりかけていた。
ヒカルの心情を見透かしたように男が優しく話し掛けてきた。
「人はあまりの苦痛に勃起する事があるのは本当のようだね。ここに居てくれる気になったのなら、
いちおうちゃんと返事を聞かせてもらおうか。そうしたらすぐにここから下ろしてあげるよ。」
男の大きな手がヒカルの顎を持ち上げた。頬を涙で濡らしたヒカルが蒼白な唇を震わせながら
何かを言おうとした。男は口元に笑みを浮かべてヒカルの言葉を待った。
その時だった。
「…はあっ、…ん…」
僅かに開いたヒカルの唇から切なげな吐息が漏れた。
男はそれを聞いて「くっ」と唸った。
「あ…あ、あつ…い…」
それは先刻までの拷問として身を焼く熱さでは無く、どうしようもないほどに甘美に体を
奥から癒そうとする熱意の熱さだった。

ベッドの上で、ヒカルの両足の間にアキラは自分の体を重ねていた。
ゆっくりとした動きでヒカルの内部に自分自身を挿入し、抽出する。
もちろん赤く腫れ上がり裂けかかっていた狭門部分を念入りに舌でほぐした後で
負担がかからぬよう少しずつ少しずつ進めたのだった。


(33)
同時に前の部分にも手を添えて、痛々しく傷が走った根元から、先端にかけて優しく撫で摩る。
そのままアキラは上半身をヒカルの上に倒し、ヒカルの額に自分の額を触れあわせる。
「…苦しくないよ、進藤。…君の体は本当は傷付いてはいない。ほら、痛みなんて感じないだろう…。」
そうしてヒカルの唇にそっと自分の唇を触れあわせる。
ピクッ、とヒカルの体が震えた。
そのまま深く唇を合わせ、舌を差し入れてヒカルの舌を求める。
戸惑ったように舌を奥に引いて居たヒカルも、やがてアキラの舌に自分の舌を絡め、
やがて互いに激しく唇を動かして求めあった。

木馬の上からヒカルの体がゆらりと揺れて倒れ、カツーンと乾いた音を立てて床に落ちた。
そこにあるのは既にただの魂のない人形の姿だった。
「く、くそっ、もう一度何とかして呼び込まねば…!」
男は人形を拾い上げて念じた。しかし二度とヒカルの意識はそこに戻らなかった。

「ああ…、はあっ、と…うや…あ…っ」
自分の部屋のベッドの上で、まだ充分思うように動かせない手足の状態でヒカルは
アキラによる「治療」を全身で体の奥から細部まで受けていた。
「そ…こはもう、…痛く…な…はあっ…」
アキラの唇がヒカルの胸の突起を捕らえ、舌全体で押し包み、舐め上げ、転がし、
もう片方の突起も指の腹でくすぐるように愛撫する。
そしてもう片方の手でヒカル自身を包み、親指で先端を弄り、ほどよく圧迫を加える。
そしてその奥で、充分に固さと熱を持った自分自身をヒカルの中で動かす。


(34)
「とお…やあ…あっ」
ヒカルの目はもう充分すぎる程にアキラをしっかりと捕らえて居た。
それでもアキラは容赦なかった。
「だめだよ、進藤…。もっとはっきり、意識が戻るまで続けないと、向こうに引き戻されて
しまう…もっと…充分に…ボクを感じて…」
そうして僅かにアキラの腰や手の動きが速められた。
「ふああっ…っ」
体の奥が宙にふわりと浮くような気がして、そのまま足下がなくなって落ちていくような
感覚をヒカルは味わった。
「ああーーーっ、塔矢…っあっ…」
体の奥を熱い物が駆け抜け、ヒカルは高まりきってアキラの手の中に放出した。
その瞬間ようやく催眠術から解けるように手足が動くようになり、
二人は見つめ合うと互いに固く抱きしめ合った。
その夜は何度もヒカルはアキラを受け入れ体を繋げた。
熱の波が体内を駆け抜ける度に悪夢の欠片が一つ一つ砕けるように、部屋の中に散らばっていた
写真が白いただの紙片に変わっていった。
「…本当にここに何か写っていたのかな。こうして見ていると、写真の事さえ、
暗示か何かで見せられていたような気がする…。」
朝、ベッドの中で裸のまま二人で一つの毛布にくるまり、拾い上げた数枚のその紙片を
ヒカルが確かめるように眺めながらアキラに話す。
「…よほどよこしまな邪念を持った者が写し出した、欲望の形だったのかもね。」
そう答えるアキラの横顔をちらりと見て、ヒカルは顔を赤らめた。


(35)
「どうしたの?進藤。」
「あのさ、オレ達、…その、シたんだよな。」
「…嫌だった?ボクなんかが相手で…」
ヒカルがぶんぶん首を横に振った。
「ち、違うよ。塔矢のおかげで助かったんだし、それに、」
小声でボソリと呟く。
「…スゲエ気持ち良かった…。あんな感じになるなんて知らなかった…」
「それは良かった。」
「それでさ、塔矢、……これからも時々…シてくれるかな…?」
「進藤さえよければ。また同じ事が起こらないとも限らないしね。」
怖い事をさらりと言い流されてうえっ、とヒカルが呻く。アキラが可笑しそうに笑い、
ヒカルが怒って唇を尖らす。
カーテンの隙間から眩しい朝の光が差し込んできていた。

棋院会館で数日後二人は顔を合わせた。
やはり全く影響を受けなかった訳では無く、悪夢から解放されたあと
ヒカルは熱を出して寝込んだ。
毎日のようにアキラが見舞い、少しでもヒカルが不安を感じないように見守ってくれた。
いつものように声をかけるアキラと対照的にヒカルは目が合った瞬間少し顔を赤らめた。
自分にとっての“初めて”がああいう形になり、その相手が塔矢だと言う事が信じられないような、
塔矢で良かったというような不思議な感情だった。



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