平安幻想異聞録-異聞- 31 - 35
(31)
ヒカルは、腕を佐為の背に回してギュッと抱きしめた。
抱きしめ返される感触があたたかい。
シュルリと衣擦れの音がして、佐為が自分の着衣をほどくのがわかる。
佐為の髪が頬にかぶって、唇に柔らかいものがそっと触れた。
つむっていた目を開くと佐為の唇だった。
「あぁ、そういえば…」
佐為が「何です?」というように首をかしげる。
「あの時、座間のやつも菅原も、オレがあんまり暴れるからって、
オレの口には触れてないんだよ。よかった。初めて唇を合わせる相手が佐為でさ」
佐為はにっこりと笑って、もう一度唇を寄せてきた。
その佐為の顔を綺麗だなぁと思いながら、口付けをうけとめる。
佐為の手が片方、腰に回って、ヒカルはそっと床に横たえられた。
佐為の舌が唇をなめるので、こそばゆくて少し口を開いたら佐為の舌が入ってきて、
ヒカルの舌をなぞるので、次にはたどたどしくそれに自分の舌をからめていた。
初めてだったけど、佐為がそうするんだから、きっと自分も同じように
返した方がいいと思ったのだ。
「ヒカルは覚えるのが早いですね」
そういいながら、佐為は器用にヒカルの着衣をはだけてしまう。
ふわりと、佐為の着物に焚きしめられた香のいい香りがヒカルを包んで、
ヒカルはそれだけで、ひどく幸せな気分になった。
自分の体の表面をやさしく佐為の手がたどる。
まるで、羽で撫でられてるみたいだとヒカルは思った。
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佐為の愛撫は本当にやさしくて、その癖いつの間にか上手に追い上げられていて
ヒカルは熱い溜め息をついた。
漏れでる息は、いつしか小さな嬌声になる。
「……んっ、ん、…佐為…」
ヒカルの呼びかけに答えて佐為が、あえぎ声をつむぐヒカルの小さな唇を、
自分の唇でふさいだ。
指をからめて、互いの口の中をさぐりあう。
佐為は開いたほうの手で、そっとヒカルの膝裏を愛撫し、柔らかな膝
の裏側を撫で、足の指先まで丁寧に触れてくる。
さわさわと触れるか触れないか程度に施される愛撫は、きつく強い愛撫よりも
ずっとヒカルの体を、心を高まらせた。
「ふ……ん……佐為、ちゃんと、触って……」
やさしすぎる愛撫に、ヒカルの方がいっそ耐えきれず、催促をしてしまう。
そんなヒカルのこめかみに、佐為はひとつ口付けを落として、
太ももに触れていた手を、ゆるゆると上へと移動させてくる。
既に屹立していたヒカルのモノに近い、足の付け根の皮膚の薄いあたりを
撫でられ、ヒカルはじらされているような、むずがゆいような、
不思議な感覚にさいなまされて、思わず鼻にかかった甘い声を上げていた。
ヒカルの喉からその声を引きだして満足したのか、今度は、足の付け根を
やさしくなぶっていた佐為の手が、スッとまだ幼いヒカル自身に添えられる。
「ぁん……」
佐為の、女もかくやというほど細くて綺麗な白い指が、自分のそんなところに
絡まっていると考えただけで、ヒカルは体中が熱くなる。
そうやって、もうこれ以上は我慢できないかもと、哀願を始める寸前まで追いつめられて、
その後に佐為が中に入ってきたときも、痛みよりも異物感よりも、
ただただ気持ちがよくて、気がつけば、もっと、と佐為にすがりついていた。
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「佐為……佐為っ…あ……あぁっ……はん……佐為っ…」
佐為がつきあげるたび、ヒカルの全身に軽い痙攣のような、甘いしびれが走る。
中で動く佐為のそれは、大きすぎもせず、小さくもなく、ヒカルには
ちょうどいい量感だった。
内の壁を擦られる感覚に嬌声をあげるのも、どういうわけか佐為の前では
恥ずかしくなかったので、声が漏れでるままに放っておいたら、
「ヒカル、声が大きすぎますよ」
と、佐為に小声で注意された。しかも、その後に
「私が、ヒカルにこんな不埒なことをしていると母上に知れたら、私は
この家から叩きだされてしまいます」
なんて言うものだから、ヒカルは本当に自分の母が佐為を叩きだす光景を
想像して、事の真っ最中だというのに、笑いだしてしまった。
「ヒカル、せっかくいい雰囲気だったのに台なしです……」
「だって、おまえ………あ…」
再び、自分の体の最奥へ潜り込んできた佐為の感触にヒカルは、
息をつまらせる。
わずかに震えるヒカルのまぶたに、佐為は唇で軽く触れると
ヒカルの中の動きを再開する。
「ぁん……ふ…………ふぁ……ん…」
ヒカルの薄く開かれた唇からは、再び、甘い声が漏れ始めたが、
それでも、その声の間にまじる小さなクスクス笑いはなかなか収まらず、
佐為は、ヒカルを再び行為に集中させるのに、ちょっとした苦労をすることに
なってしまった。
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相手の体に『溺れる』というのは、こういうことを言うのかもしれない。
ヒカルは、佐為にゆるく揺さぶられながら、掛け布団の端をきつく噛んでいた。
本当は、思うさま快楽に身をまかせて、声を上げてしまいたかったけれど、
さっきの佐為の言い分ではないが、万が一にも、自分の声に家族が目を
覚まして起きてきて、この場を邪魔されるようなことはさけたかったのだ。
「うっ、くっ、くんっ………」
声に出して、体の外に逃がしてしまえない分の快楽が、ヒカルの体の中に
埋み火のようにたまって、それがより全身の性感をとぎすましていく。
ヒカルが、熱にうかされたような表情で眉をよせているのに、
佐為は心配になって、小さな声でささやいてみる。
「ヒカル……つらいのですか?」
ヒカルが小さくうなずく。驚いて、佐為が自分も途中なのにも構わず、
身を起こそうとしたが、ヒカルの手が、強く佐為の体を捕まえて離さない。
口に噛んでいた布のはしを一時放し、そのままヒカルは、佐為の顔を
自分の方に抱き寄せる。
そして、佐為の肩口に、少し苦しげに上気した顔をうずめ、
涙をうっすらとその目じりに、にじませたまま、
擦れた声でつぶやいた。
「…ヨすぎて……つらい……」
――この少年にこんな顔で、こんなことをささやかれて、
理性の飛ばない男などこの世にいるのだろうか?
ヒカルは、尚深くまで佐為のモノを飲み込んだその瞬間の悦楽に、
くんっと、顎をそらした。
「ぁっ……佐為っ!」
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「ヒカル」
佐為の声が耳をくすぐった。
頂点の一歩手前まで上り詰め、体がふわりと浮くような感覚に、
ヒカルは何か現実感のあるものが欲しくて、自分の足を佐為の足にからめた。
なんだか、体中の感覚がおぼつかない。
(イイ…、イイよぉ…、佐為)
それを佐為に伝えたくて、ぎゅっと、その首に手をまわして、
すがりつくように抱きしめる。
それに答えて、佐為が、そっと鎖骨に口付けし、唇で胸をたどり、
ヒカルの胸のまだ薄い色の突起を口に含んだ。
その行為が、ヒカルに頂点への最後の階段を上らせた。
「んんっ、んんっ、ん……!」
思わず上がりそうになる高い声を飲み込もうと、ヒカルは、
口に含んだ布を強く噛みしめて、その顔を強く布団に押し付ける。
その顎をそっと、佐為がつまんで上を向かせる。思わず噛んでいた布が口から外れ、
外にもれそうになった声を、佐為がその唇で塞いで飲み込んだ。
口付けは、これ以上ないほど甘い味がした。
ヒカルは、やんわりと自分の熱の中心を刺激してくるその佐為の
手の中に、自分自身の白い物を放つ。
佐為の腕が包むように震えるヒカルの背中を抱き寄せた。
恍惚とした多幸感の中、少し遅れて、ヒカルも自分の中が佐為の放った物で
熱く濡れるのを感じた。
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