初めての体験+Aside 31 - 35


(31)
 ヒカルが社の顔を覗き込んできた。暗闇でもわかるくらい間近にヒカルの顔がある。
大きな瞳。愛らしい口元。社は唾を呑み込んだ。
「どう…?」
「…したい……けど…」
アキラの家で、ヒカルとそういう行為をするのは気が引けた。ヒカルはもともとアキラの
恋人でそこに社が割り込んできたのだ。ヒカルのことが好きで好きだたまらないが、
それでも社の中にある生真面目な部分が、それを良しとしないのだ。
―――――いくらなんでも、それはアカンと思う…
自分でもやせ我慢だと思う。本当は、このままヒカルの誘惑にのってしまいたい。
 黙り込んだ社の気持ちを感じ取ったのか
「ゴメン…オレ、無神経だったな…ゴメンな社…」
ヒカルは謝った。そして、自分の布団へと戻る。
「…進藤、手ェ繋いでもええか?」
手を伸ばすと、ヒカルは黙って自分の指を社の指に絡ませた。

 暫くして、隣からスウスウと小さな寝息が聞こえてきた。ヒカルも疲れていたのだろう。
興奮して眠れないかと思っていた自分も、その可愛らしい寝息につられるようにいつの間にか
夢の世界へ引き込まれていた。


(32)
 どのくらい時間がたったのか眠っていた社の脳が異変を感じ取った。
「……!…っ」
何か音が聞こえる。社の意識が覚醒するにつれ、ただの音が言葉として明確な意味を持ち始める。
社はぼんやりと音のする方に顔を向けた。
 「…や…やだ…!やめてよ…塔矢…」
ヒカルが小さな声でアキラに抗議をしている。
「静かに…でないと彼が起きちゃうよ?」
楽しそうなアキラの声にヒカルは黙った。
 ピチャピチャという湿った音が社の耳を打った。
「やだよ…やめてよ…やめってったら…!」
それでも音は止まない。
「ア…やだ…ホントに…やめてよぉ…」
ヒカルは小さな声ですすり泣いた。
 信じられない光景だった。眠っている社の隣でアキラがヒカルを抱いている!?ヒカルと
自分の手は未だ繋がれたままだった。
 「し――――っ。聞こえちゃうだろ?」
ヒカルの胸を嬲っていたアキラが顔を上げた。闇の中ではよく見えないが、手はまだ
小さな突起を弄っているようだった。
「ん…ふぅ…お願いだからやめてくれよ…」
アキラを押しのけようとする。繋がれていた左手を外そうとするのをアキラが押し止めた。
「動いちゃダメだよ。」
社が起きてしまうと言われて、ヒカルは抵抗を止めた。だが、口からは絶えず、哀願を
繰り返す声が紡がれている。それでも、アキラはヒカルを嬲る手を止めようとはしなかった。


(33)
 「や…だ…アァ、ア…いやだぁ…!」
ヒカルが高い悲鳴を上げた。その声に自分で驚いて「あっ」と、口を押さえる。
 闇になれた社の瞳に、アキラがヒカルの下肢を弄んでいる姿が映った。
「お願いだよぉ…もう…やぁ…」
どんなに頼んでも止めてくれない。ヒカルは諦めたのか、首の所まで捲り上げられた
パーカーの裾を口に銜えた。
「そうだね。それなら、きっと聞こえないよ。」
アキラがヒカルの頬を撫でた。
 社は、叫びたかった。自分が起きていることを知らせたかった。止めて欲しい。自分に
そんなヒカルの姿を見せつけないで欲しかった。だが、自分に聞こえないようにと必死で
堪えているヒカルのことを考えると、それをすることは出来なかった。
 「う…うぅ…く…」
繋がれた手を伝わって、ヒカルが今何をされているのかが伝わってくる。
「んん―――――――――!」
ヒカルが社の手を強く握りしめた。そして、ブリッジをするように身体を仰け反らせる。
 アキラが身体を揺らすと、ヒカルの身体も同じように揺れた。そして、社の腕も同じように
揺らされた。
「ん、ん、ううん……ん!」
強く握られたヒカルの指先から力が抜けた。


(34)
 アキラはヒカルの口からパーカーを取った。自由になった唇から、ハァハァと荒い息が
吐かれた。
「……ひどいよ…オレ…ヤダって言ったのに……」
ヒカルが涙声で訴えた。アキラはヒカルの目尻に浮かぶ涙を拭うと、
「ゴメンね…どうしても進藤としたかったんだ…」
と、言った。一緒に眠るつもりだったのに、ヒカルがつれない態度をとったこと、
我慢するつもりだったけどどうしても耐えられなかったことを告げる。
「許してくれる?」
と、額同士を押しつけながら囁いた。ヒカルはちょっと目を伏せて、コクンと小さく頷いた。
社の目には見えないが、きっと頬を染めているに違いない。
 アキラは用意していたタオルでペニスを拭いながら、ヒカルから抜け出た。そして、
ヒカルの汚れた下半身を手早く拭いた。
「塔矢…オレ…お風呂に入りたい……」
ヒカルはそう言って、繋いだままの手の方を見た。アキラの言葉を真に受けて、手を外せば、
社が起きてしまうと思っているのだ。ヒカルは社の顔と、手を交互に見ていた。社は、
ヒカルに気がつかれないように慌てて目を閉じた。


(35)
 「大丈夫だよ。そっと外せば、起きないよ。」
そう言って、アキラは繋がれている手に触れた。ゆっくり慎重に絡まった指を一本ずつ
引き剥がしていく。そして、全部の指が外れ、二人は引き離された。
 アキラは、社の側に屈み込んで、顔を覗いてきた。社は息を殺してジッとしていた。
「よく寝ているよ……進藤、お風呂は沸いているから、早く行っておいで…」
「後で、着替えを持っていくよ」と言うアキラの言葉に頷いて、ヒカルは部屋を出ていった。
 障子が閉じられ、ヒカルの軽い足音が遠ざかっていく。アキラは、社の頬をソロリと
撫で上げ、耳元で囁いた。
「寝たふり、ご苦労様。」
 社は、思わず飛び起きた。薄闇の中で嫣然と笑うアキラに、背中がぞくりとした。
恐怖だけではない何か別の感覚が、全身を駆け抜けて社はたじろいだ。
―――――えぇ!?なんでや?
確かに外見だけ見れば、アキラはめったにないきれいな顔をしていた。そして、礼儀正しく、
親切だ。十人いれば、十人全員がそう言うだろう。本性を知っている社でさえも、こんな
風にされたら今までのことは全部自分の夢だったのではないかという気がする。
『アカン!流されたら…コイツは悪魔や…』
自分に言い聞かせる。あくまでも自分はヒカルが好きなのだ。それは、間違いない。神に
誓ってもいい。
ヤツは、アメとムチを使い分けているのか?
もしかして…オレ…もう…コイツに落とされかけてる?
怖い考えに、全身に鳥肌がたった。
イヤや―――――――――――――――――――――――――――――― !!
社は、心の中で絶叫した。



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