とびら 第二章 31 - 35


(31)
アキラはヒカルの肌をそっと撫で、小さな息をついた。
「塔矢?」
「きみの肌に初めて触れた……」
感激したように目を潤ませている。何だか調子が狂う。
アキラはヒカルの頭をつかみとるようにして倒し、角度を変えながらキスをしてくる。
いつのまにかジーンズのファスナーもしっかりおろされていた。
アキラが脱がせやすいように腰をずらす。
それほどもたつくことなく、ヒカルは全裸にされた。
「進藤、後ろを向いて」
潤滑剤のふたを開けながらアキラは言う。恥ずかしかったが、ヒカルはベッドのふちに手
をついて、尻をアキラのほうへと突き出した。
「んっ……ふ……」
アキラの指が入れられた。この最初の異物感がいまだに気持ち悪い。
だがそうされることに慣れたヒカルの身体は次第に反応しはじめた。
「あ……ふっん……ぐっ……はぁっ……」
くぐもったヒカルの呻き声に煽られているとでも言いたげに、指の動きが速くなる。
周囲をなぞるように指を沈ませ、何かを探るように押し上げてくる。
すると下半身も疼きだす。触れてほしいがアキラは触れてこない。
ヒカルの後ろをほぐし、肌をさする。じれったくて仕方がない。
それでも頭のなかが熱さで溶けていくような感覚は広がりはじめる。
奥へと侵入した指が、さらに奥へとえぐりこむように進んでいく。
すると電流が走り抜けるような衝撃が多くなってくる。頭がおかしくなりそうだ。
「進藤……」
布団をつかんでいた左手をとられ、指を後孔へともっていかれた。
「塔、矢……? あっ……」
自分の指を後ろに入れさせられた。抵抗なく入ったが、自分でそんなところに入れたこと
がなかったヒカルは顔を真っ赤にした。
アキラの指が付き添うようにして入れられた。
指は中をかきまわすように動き、それに合わせて重ねて入っていたヒカルの指も動いた。


(32)
ヒカルは布団を噛んだ。階下には母親がいる。大きく喘いで聞こえたらまずい。
教室でのときも声を出すのをこらえた。だが結局出てしまい、危ない目に合った。
我を忘れてしまわないようにとヒカルは切に願った。……それは不可能に近いのだけれど。
「う、くぅっ……ん……っ」
アキラの指はペニスの裏側に当たるところを強弱を付けて突いてくる。
それにつられるように自分の指も出て入って、をくりかえす。
「あぁっ……ぅん……」
さらに刺激が欲しくてヒカルは自分から指を増やした。
人さし指だけだったのに、中指、薬指が加わる。こんなに広がるとは驚きだった。
ここに和谷のものが、そしてアキラのものが入ったのだ。
ヒカルは右手で己の乳首をいじった。膨らんだそこは敏感になっていた。
くすり、と笑う声が聞こえ、ヒカルは身体をよじってアキラを見た。
「進藤がそうしている姿、すごくそそる」
アキラの息が荒くなっている。ヒカルを見る目は野獣のそれだった。
「もう入ってもいいよね……」
指が引き抜かれ、ヒカルは物足りなさに切なくなってしまった。
アキラはゴムの袋を破り、付けようとしている。だがうまくいかないようだ。
どこまでも世話が焼けるやつだと思う。
ヒカルは唇を寄せて、器用に舌と手を使ってゴムを装着させた。
アキラは少しはにかんだ顔をした。ヒカルは我知らず可愛いと思ってしまった。
そんな気持ちがわかったのかアキラは顔をしかめ、ヒカルをもとの体勢にさせた。
そして充分ほぐれきったそこにゆっくりと自身を沈ませていった。
「んんっ……しん、どっ……」
初めてのときよりも余裕のある動きだった。アキラはヒカルをうかがうように見た。
苦しがっていないか、痛がっていないかを気遣う表情だった。
ヒカルはと言えば、早く快感が欲しくてたまらず、悠長なアキラに苛立った。
わずかに腰を振ると、ようやく安心したのかアキラもゆるやかに動き出した。
「あぁっ、あ! はぁっ、つぅ、ん……!」
アキラに揺さぶられ、ヒカルは泣くような声をあげた。


(33)
アキラのペニスがヒカルの中を引いては、もっと深い場所まで突き上げてくる。
「……うぁっ……とう、やっ……! いぃっ……んぁっ」
「進藤……僕とはしたくないって……言ってたのに、こんなに乱れて……」
尻を撫でながらうっとりと、「イヤラシイんだ」と言う。ヒカルはかっと赤くなった。
アキラはヒカルのペニスに触れきた。
「感じてるんだね……先からすごいこぼれてるよ……もっと喘いでよ……」
本当にこいつはくせ者だ、とヒカルは思った。ヒカルの同意のもとで行為をしている
ためか、それとも二度目だからか、アキラに初めてのときに見られたような焦りがない。
それどころか本性を表しはじめている。
「腰も細いし、肌が手に吸い付いてくるようだし……進藤って抱き心地がいいね……」
アキラは言葉でヒカルの身体をいたぶる。ヒカルはそんなふうに煽られたことがないので、
どういう反応をしたらいいかわからなかった。恥ずかしくてたまらない。黙ってほしい。
突然ドアがノックされた。ヒカルはぎくりとした。
「ヒカル、お母さん買い物に行ってくるわよ」
「っあ……っ……」
返事をしようと思うのだが喘ぎ声を出さないようにするだけで精一杯だった。
「僕はもうしばらくお邪魔しています」
アキラの涼しげな声が母親へと向けられた。
「はい、ごゆっくりね」
そのセリフはまるで見透かしているかのように思えた。母親はドア一枚を隔てたところで、
息子とその友人がこんなことをしているのを想像もできないはずなのだが。
階段を下り、玄関が閉まる音が聞こえた。同時にアキラは笑った。
「僕たちって、こういうことが多いね。スリルがあっていいよね」
「……オレは、イヤだ……」
アキラが笑うのがわかった。アキラの笑みはタチが悪いとヒカルはわかりはじめてきた。
腰をつかまれ、ベッドへとずり上げられながら身体を反転させられた。
「おいっ! 入れたまま回すなよ!」
だがヒカルの文句などどこ吹く風、アキラはのしかかってきた。
「進藤の喘ぐ顔を見ながらしたいんだ……」
耳元でささやく声は、妖しい気分にいざなうものが含まれていた。


(34)
アキラが動くと再び快さが戻ってきた。
いつもは畳の上なので、ベッドのきしむ音が慣れなくて耳をふさぎたくなった。
つまりベッド初体験なのだ。動くたびに身体が沈んで不安になる。
「ふ……ん……うん……」
「声、思い切り出してよ、進藤……」
そう言われるとますます出なくなる。ヒカルは腕で口元をおおった。
アキラの顔が近い。きれいな顔だ。見惚れている自分に気付き、ヒカルは目をつぶった。
すると不思議な感覚に身がたゆたう気がした。いったい何だろう、と意識を集中させる。
自分が誰に抱かれているのかわからなくなってくる。こんなのは初めてだ。
「進藤……」
呼びかけられ、ヒカルはおそるおそる目を開けた。目の前にアキラがいる。
ほっとしたような、がっかりしたような、そんな気分になる。
「見てよ……」
ヒカルはアキラの視線をたどった。そして慌ててそらした。
自分の恥ずかしいところが大きく広がって、アキラのペニスを根元まで受け入れている
のが見えたからだ。
「ほら、ここまで……」
ヒカルの少しふくらんだ下腹を指でたどる。
「僕のが入ってる……」
「言うなよ、そんなことっ」
その部分を見せないようにヒカルは身体をねじり、下半身に力をこめた。
それが心ならずもアキラのペニスを締め付けてしまったらしい。
「くっ、あ! 進藤っ!」
アキラは理性がぶっとんだと言わんばかりに腰を打ち付けてきた。
「やだっ……とう、やぁっ……!」
身体の中でアキラのペニスが激しく脈打っているのを感じる。
ヒカルは思わずアキラの背へと手を回した。ずれないようにと爪をたててしまう。
痛みのためかアキラは顔を少し歪ませたが動きは鈍くならない。
頭の中も身体も熱くて沸騰しそうだった。意識がどこかにいってしまいそうだった。
実際いってしまったのかもしれない。
だがヒカルのまぶたの裏にはアキラの顔が焼きついて離れなかった。


(35)
火照ったアキラの肌を感じ、ヒカルは目を開けた。しばらく気を失っていたらしい。
「んん〜……わあ!」
みじろぎして、ようやく自分がまだアキラに繋ぎとめられていることを知った。
妙に頭が冴えていて、自分の中にあるアキラのものを意識させられてしまう。
その形や太さまでがくっきりと脳裏に刻み込まれそうで、ヒカルは頬を赤らめた。
「進藤」
アキラが身体を起こした。抜くのかと思いきや、また小刻みに動き始めた。
「おい、塔矢……」
「もう一回」
「え? 嘘だろ!」
嘘ではない、と言うようにアキラのペニスは質量と硬さを増し、またヒカルの中で我が
物顔に振舞いはじめた。ヒカルは信じられない思いでいっぱいだった。

部屋の中に碁石の音が響く。アキラが並べているのだ。
外はすでに夕闇が迫り、部屋の中は薄暗くなっていた。
あの後アキラは一回と言わず、三回も続けてヤッたのだ。ヒカルはもうへとへとだった。
うまいかと言えば疑問は残るが、それを補うようなパワーがあった。
ヒカルはベッドから起き上がれず、ぼんやりとアキラを見ていた。
「じゃあ僕帰るよ」
もう衣服を身に着けていたアキラはベッドに近寄り、軽くヒカルの頬にキスをした。
口をきくのも億劫で、アキラが出て行くのを黙って見ていた。
「おばさん、お邪魔しました」
「あら、お夕飯食べていかない?」
「いえ母が用意してくれているので、今日は遠慮させていただきます」
「うちの子をよろしくお願いね。また遊びに来てちょうだいね」
「はい。それではさようなら」
アキラは家を出たようだ。ヒカルはベッドからはいずり出た。盤面が見たかった。
だが盤面を見たヒカルは一瞬かたまった。三十数手までしか進んでいなかったのだ。
「あのヤロウ! ここまでオレにしといて、こんだけしか並べてないのかよっ!」
今すぐアキラをぶん殴ってやりたくなった。階下から母親の声が聞こえてきた。
「ヒカル、何を騒いでいるの! うるさいわよっ」



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