無題 第2部 32
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欲望の波を性急にせがむアキラを感じ取ると、緒方は彼の下半身を覆うものへと手をかけた。
そして下着ごと全てを足から抜き取ると、しかし、更なる刺激を求めてひくついている中心部を
避けて両足首を捕らえてそこに顔を寄せた。片足の踝の窪んだ個所にくちづけ、それから踝か
ら指の付け根までに吸い付き、舐め上げながら時折歯を立てる。
逃げようにも、両足首は強固な力で固定され、くすぐったさとその中に混じる小さな痛みが確か
な快感となって遠い足先から背骨までびりびりと届き、アキラの身体をよじらせる。
些細な刺激にも敏感になっているその様子を堪能してから、緒方は彼の足を押し開き、脹脛の
筋肉を辿るように舌を這わせていく。膝近くまで到達すると今度はその足を肩に乗せ、膝の裏
から太股の内側へ向かって唇を移動していく。焦らすようにアキラの反応を玩びながら、ゆっくり
と移動する舌先がやっとその根元へ到達すると、ひときわ大きく、アキラはその身体を捩らせた。
だが、その反応を一瞬楽しんだ後、先端を舌先で軽く弄っただけですぐに顔を離し、もう一度
足元に戻って今度はもう一方の足の指元を責め始めた。
一番敏感な部分を避け、執拗に身体の先端から中心に向かって与えられる刺激は、足元の砂
をさらっていく波のように、アキラをもどかしく、不安にさせる。
だがそのもどかしさを煽るように、緒方の愛撫はそれに反応するアキラの感覚が頂点に達する
手前にすっと引いて、別の場所への新たな攻撃を始める。
耐え切れずにアキラの手が捨て去られた自分自身へと伸び、擦り上げていこうとする。
が、緒方はいち早くそれを察し、その手を押さえつけた。
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