Shangri-La第2章 32
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食事が済むと、アキラが断るのも聞かず
緒方はアキラを車で家まで送った。
途中いくつかの話題は出たが、差し障りのないありきたりの話で
何も聞かれないことが、アキラには逆にありがたかった。
自宅が近くなった所で緒方に礼を言うと、緒方からは
もう二度と部屋には入れない、と、固い口調で告げられた。
門の前ぴったりに着けられた車から降りても、
緒方の車はすぐには発車せず、アキラが玄関をくぐり
鍵をかけてやっと、エンジン音が彼方に消えていった。
きちんとアイロンまでかけられた服。小さいころ好きだった朝食。
入れられても自分には出されなかったコーヒー。
刺激物を母が酷く嫌っていた、という理由で
中学に上がって初めて、碁会所でコーヒーを口にした。
そして寸分違わず門の前に着けられた車―――
もう、アキラは十分に気づいていた。
今朝の緒方に、自分は幼い子供として扱われたのだ。
本当は、そんなに子供なんかじゃない。結構うまくやっていけている。
そう思っていても、それを妨げる存在が確実にあるのも分かっていた。
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