パッチワーク 32
(32)
「塔矢だ、塔矢アキラだ。」振り返ると塔矢君と目が合ってしまった。「藤崎さん?」睨ま
れている気がするのは気のせいではないだろうな。ジブンノテリトリーニハイッテクルナっ
てことだろうな。「進藤と待ち合わせているの?」ヒカルハキョウハアナタノトコロニトマ
ルヨテイナンダカラソンナハズナイノワカッテイルデショウニ。できるだけにこやかな顔を
して「部活で会館の見学に来たの。もう帰るところなの。」周りの人も塔矢君と話している
のは誰だって感じでチラチラこちらを見ながら通り過ぎていく。「アキラ君」塔矢君を呼ぶ
人がいてそちらを見ると白いスーツを着た表情のきつい人で、その隣に白川先生がいらした。
先生も私に気づいたようで「藤崎さん、お久しぶりですね。」「ご無沙汰してます。」「進
藤君ならもうすぐ降りてきますよ。」「ヒカルと待ち合わせじゃなくて、部活で見学に来た
んです。」そうこうしてる間にヒカルが何人かの人と一緒にエレベータから出てきた。「あ
れ、あかり?」「ヒカル」「なにしてんの」「部活で見学に来たの」「へー。あっそうだ
おかあさんにチャーシュー朝ラーメンに入れたら無くなったっていっといて。」大丈夫、朝
食の時おばさん気が付いていて今日のうちに作らなきゃって言ってたから。 ヒカルと一緒に
降りてきた人たちが「進藤の彼女らしい」と言っているのが聞こえた。
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