トーヤアキラの一日 32 - 33
(32)
二人は黙って棋院を後にして、寄り添いながら歩き出した。二人は何も言わないのに
同じ方向に歩いている。人通りが少ない場所に来ると、どちらからともなく固く手を
繋いでいた。
アキラは、久し振りに触れるヒカルの柔らかい手の感触に、神経を集中していた。
ファーストキス以降、電話でヒカルの声を聞くと、それだけで体の中心が疼くのを
止める事が出来なかった。キスをした時のヒカルの唇や表情や匂いを思い出すだけで、
押さえようの無い欲望がアキラを支配していた。今こうしてヒカルの手に触れると、
この場所ですぐにヒカルを抱き締めて思う存分ヒカルを味わいたい衝動にかられる。
ヒカルを抱き締める想像をするだけで、鼓動が早くなり、息苦しくて言葉が出て来ない。
ヒカルは、そんなアキラの気持ちに気付いているのか、或いは負け戦で気持ちが沈んで
いるのか、いつもの様に話かけて来る事は無かった。
公園に入り、前回と同じ大きな木の側まで来ると、アキラはいきなり激しくヒカルを
抱き締めて唇を重ねた。会えなかった間の想いや負けた悔しさを、全てぶつけるかの様な、
それは荒々しく噛み付くような口付けだった。
左手をヒカルの背中に回して、強く抱き締めて体を密着させる。右手はヒカルの耳から
頭にかけて押さえつけるように当てられて、激しく舌をヒカルの口の中に差し入れた。
一瞬押される形になったヒカルだが、腕をアキラの背中に回して、ヒカルもまたアキラを
強く引き寄せて、アキラの激しい口付けを受け入れていた。
アキラはヒカルの口腔内を荒々しく嘗め回して、自分の唾液を流し込んだ。ヒカルが
それを飲み込むと、今度は強く吸い上げる。ヒカルも喉を鳴らしながらその行為に
応じていた。そうして何度も二人の舌が行き来してグチュグチュと音を立てる。
お互いに呼吸が荒くなり気持ちが昂っているのが分かった。
(33)
アキラはヒカルを抱き締めながら体を反転させて、ヒカルの体を大きな木に押し付け、
やっと唇を離した。荒い息を吐きながら、
「進藤・・・・・進藤・・・・・」
と囁き、今度はヒカルの頬、鼻、瞼、おでこを舐めるように口付ける。そうして
顔中を嘗め回しながら、ヒカルのコートのジッパーを下げて、前を開く。アキラはスーツの
上にコートを着ていたが、前のボタンは止めてなかったので、お互いの体がより密着する
形になった。ヒカルが肩を上下させながら激しく呼吸する様子が体を通して伝わって来た。
アキラは左手を、前が開いているヒカルのシャツの中に忍び込ませて、背中に回した。
Tシャツ一枚を通して触れるヒカルの背中は熱く、軽く撫でると、ヒカルがビクッと
反応して、体の力が抜けていくのがわかる。そのヒカルの反応に煽られて、アキラが
下半身を押し付けるように密着させると、お互いの熱り立った中心部が当たった。
「うっっ!」「んっっ!」
二人は同時に声を漏らした。アキラはさらにリズムを付けて下半身を押し付け始めた。
「んっ!!あぁっ!!・・・ダメだよ、トーヤぁ・・・・やめて・・・っ」
とヒカルの甘えるような訴えを耳元で聞いた瞬間、アキラの自制心が吹き飛び歯止めが
効かなくなった。アキラはヒカルの首に口付けながら、右手をヒカルの肩からいきなり
股間に移動させ、固く存在を主張しているヒカルの分身を服の上からギューッと握り締めた。
「ああぁぁぁっ!!ぁぁっ!!うっ!!・・・・ダメだってば、トーヤ」
その声に、アキラはさらに興奮して激しく手を上下に動かした。
ヒカルは体を捻りながらアキラの手から逃れようとするが、全く力が入らず、反って
より強く木に押し付けられる格好になってしまった。
ヒカルの耳朶を舐めながら、夢中で手を上下させていたアキラは、一度手を離すと、
ヒカルのズボンのジッパーに手をかけた。
その瞬間、ヒカルはアキラの肩を掴んで押しながら、
「ダメだよ!塔矢!やめて!」
と、きっぱりと拒否の意思表示をした。
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