Shangri-La第2章 33


(33)
アキラは靴を脱ぎ、自室へと向かう。
そう、ヒカルと一緒に居る時間が増えるにしたがって、
自分はどんどん子供になっていく。
――時計は今なお、巻き戻され続けている。
椅子の上に鞄を置き、中の携帯を探った。
携帯は、いつヒカルからのメールや電話があってもいいように
家の中でも、常に持ち歩いていた。
そして、探り当てて取りだした携帯には着信が4件。
(―――進藤!?)
慌てて携帯を開くと、着信は午前3時過ぎ、メッセージはなかった。
曜日から言っても、また着信の時間から言っても
多分間違いなく、アルバイトの休憩時間にかけてきたのだろう。
アキラは慌てて電話をしようとして、さらに慌てて思いとどまった。
まだ午前中だから、ヒカルはきっと寝ているだろう。
今日は確か、森下先生の研究会があるはずだから
午後になったらメールしておけば、帰りにでも読んでくれるだろうか。
アキラは今日の陽が落ちるのが、楽しみで仕方なくなって
あまりに浮いた気持ちを落ち着けようと、碁盤の前に座った。



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