失着点・龍界編 33
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「さあ…どうだったかねえ…」
席亭にとぼけられる。店の中を見回したヒカルはあの時の男達がいるのを見て
息を飲んだ。三谷を抱いていた方の2人だ。
「ほお、予定より一日早く来るとは感心だな。」
そして三谷もヒカルに気がついて驚いたように立ち上がった。
その三谷に掴み掛かるようにしてヒカルは問いつめた。
「塔矢はどこだ!?」
「塔矢は…、」
三谷が口籠った。と同時に直感でヒカルが失踪した棋士仲間が塔矢である事を
察した。ヒカルは塔矢を救いに来たのだ。自分の為ではなく…。
ふいに男が三谷の腕を掴んで引き寄せ、耳もとで何かを指示して来た。
男の言葉に、三谷はぐっと唇を噛んだ。
そして男達はヒカルに三谷について行くよう命じた。
「沢淵さんはあっちで楽しんでいるんだ。オレ達はオレ達で楽しもうぜ…。」
男達がそう小声で話しているのが聞こえて来た。
カウンターでカギを受け取った三谷に連れられるようにヒカルは
「龍山」を出る。
建物の裏の出口から隣接したビルに入る。念のため裏を見張っていた伊角が
それを見かけて携帯で和谷に連絡をとった。和谷は和谷で必死に緒方の
居場所をあちこちに連絡をとって探していた。
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