失着点・展界編 33


(33)
和谷は、アパートの自分の部屋で碁盤に向かい、棋譜並べを繰り返していた。
真新しい包帯の巻かれた右手で石を持ち、置く。
力が入れにくい指先から碁石が落ち、畳の上を転がった。
それを拾おうとして、わずかに残った黒い染みの跡に目がいく。
「…進藤…。」
最初に浮かんだのは、度胸付けのためにプロ試験の前に伊角と3人で
碁会所を巡って打ちまくっていた時の事だった。歳の離れた相手とあまり
対戦したことがないというヒカルの為に。
弟みたいでかわいかった。慣れない院生達の中で、一人でも平気かと思えば、
何かあると仔犬みたいにくっついてきて不安そうに聞いて来る。
一緒にプロ試験に受かった時は、本当に嬉しかった。
「…いつから…かな…。」
ヒカルが手合いに来なくなって、それでもあまり心配はしなかった。
本当に何かあったら自分の処に相談にくるはずだ。少し気持ち的に躓いている
だけだ。それでも森下先生に言われて、ヒカルに会いに行った。
公園の中で、久々に会ったヒカルは、別人に見えた。
痩せて、儚げなうつろな目をしていた。しばらくは声を掛けられずにヒカルを
見ていた。ふわりと漂うように立っているヒカルを捕まえたかった。
願望はその時に生まれ、あのパーティーの後のこの部屋で達成された。
あの日と、手合いの日。ヒカルを捕らえ、心の奥底の願望のままにヒカルを
串刺しにした。ヒカルもそれを了承したのだ。合意の上でのSEXだ。だが。
自分はヒカルに苦痛しか与えていない。自分の下で、切なく身を捩らせて
甘い声で喘ぐヒカルを見てみたい。許されない事と分かっていても。
「…もう一度、…もう一度だけ…、…進藤…。」



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル