闇の傀儡師 33 - 34
(33)
同時に前の部分にも手を添えて、痛々しく傷が走った根元から、先端にかけて優しく撫で摩る。
そのままアキラは上半身をヒカルの上に倒し、ヒカルの額に自分の額を触れあわせる。
「…苦しくないよ、進藤。…君の体は本当は傷付いてはいない。ほら、痛みなんて感じないだろう…。」
そうしてヒカルの唇にそっと自分の唇を触れあわせる。
ピクッ、とヒカルの体が震えた。
そのまま深く唇を合わせ、舌を差し入れてヒカルの舌を求める。
戸惑ったように舌を奥に引いて居たヒカルも、やがてアキラの舌に自分の舌を絡め、
やがて互いに激しく唇を動かして求めあった。
木馬の上からヒカルの体がゆらりと揺れて倒れ、カツーンと乾いた音を立てて床に落ちた。
そこにあるのは既にただの魂のない人形の姿だった。
「く、くそっ、もう一度何とかして呼び込まねば…!」
男は人形を拾い上げて念じた。しかし二度とヒカルの意識はそこに戻らなかった。
「ああ…、はあっ、と…うや…あ…っ」
自分の部屋のベッドの上で、まだ充分思うように動かせない手足の状態でヒカルは
アキラによる「治療」を全身で体の奥から細部まで受けていた。
「そ…こはもう、…痛く…な…はあっ…」
アキラの唇がヒカルの胸の突起を捕らえ、舌全体で押し包み、舐め上げ、転がし、
もう片方の突起も指の腹でくすぐるように愛撫する。
そしてもう片方の手でヒカル自身を包み、親指で先端を弄り、ほどよく圧迫を加える。
そしてその奥で、充分に固さと熱を持った自分自身をヒカルの中で動かす。
(34)
「とお…やあ…あっ」
ヒカルの目はもう充分すぎる程にアキラをしっかりと捕らえて居た。
それでもアキラは容赦なかった。
「だめだよ、進藤…。もっとはっきり、意識が戻るまで続けないと、向こうに引き戻されて
しまう…もっと…充分に…ボクを感じて…」
そうして僅かにアキラの腰や手の動きが速められた。
「ふああっ…っ」
体の奥が宙にふわりと浮くような気がして、そのまま足下がなくなって落ちていくような
感覚をヒカルは味わった。
「ああーーーっ、塔矢…っあっ…」
体の奥を熱い物が駆け抜け、ヒカルは高まりきってアキラの手の中に放出した。
その瞬間ようやく催眠術から解けるように手足が動くようになり、
二人は見つめ合うと互いに固く抱きしめ合った。
その夜は何度もヒカルはアキラを受け入れ体を繋げた。
熱の波が体内を駆け抜ける度に悪夢の欠片が一つ一つ砕けるように、部屋の中に散らばっていた
写真が白いただの紙片に変わっていった。
「…本当にここに何か写っていたのかな。こうして見ていると、写真の事さえ、
暗示か何かで見せられていたような気がする…。」
朝、ベッドの中で裸のまま二人で一つの毛布にくるまり、拾い上げた数枚のその紙片を
ヒカルが確かめるように眺めながらアキラに話す。
「…よほどよこしまな邪念を持った者が写し出した、欲望の形だったのかもね。」
そう答えるアキラの横顔をちらりと見て、ヒカルは顔を赤らめた。
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