初めての体験 33 - 34


(33)
 ヒカルが正気に戻った時、もう男はいなかった。ヒカルは裸で転がされていた。
『とりあえず・・・生きている・・・』ホッとしたら、涙が出てきた。
顔も体も、涙と精液で滅茶苦茶だった。泣きながら、ハンカチで汚れを拭った。
体のあちこちがズキズキと痛んだ。
 家に帰ってからも涙が止まらなかった。風呂に入り、体中を何度も洗った。
食事もとらず、部屋に閉じこもった。両親が心配したが、真相を話せるわけもなかった。
こんな屈辱は初めてだった。一晩泣いて忘れようと思った。



 だが、ヒカルは知らなかった。自分の屈辱の現場を写真に撮られていたことを・・・。
そして、それがネットで販売されていたと言うことを・・・。

「この写真、進藤にそっくりだ・・・。」
「へえ・・・。写真だけじゃなくて・・・・・・や・・・・・・もあるんだ・・・。」
アキラは購入ボタンをクリックした。

 「ふふふ・・・。さすがヒカルたんだ・・・。発送が追いつかないぜ・・・。」
男は笑いが止まらないと言った感じで、荷造りをしていた。
 宛名には、緒方や和谷、その他の棋士の名前が書かれている。
「近い内に、新商品を仕入れるか・・・」

 男は、今日も物陰からチャンスを窺っていた。ヒカルはそれに気づいていなかった。


<終>


(34)
 「な・・・何だよ!これ・・・!」
ネットカフェで、ヒカルが偶然アクセスしたページにヒカルの写真があった。
それも、ただの写真ではない。ヒカルが陵辱されている写真だ。
 『アイツだ・・・あの時の男・・・』
おぞましい記憶が蘇る。恐怖と屈辱の時間だった。写真を撮られていたなんて
知らなかった。

 そう言えば、この前アキラの部屋で見つけた写真・・・。本棚にきちんと
整列された本の後ろに封筒が隠されていた。手にとって中を開けてみると、
写真が入っていた。それを取り出そうとした時、アキラが慌ててヒカルの手から
それを引ったくった。ちらりとしか見えなかったけど・・・自分に似ていた
ような・・・。
 それに最近、緒方や他の棋士達の自分を見る目が・・・変・・・。
「ちくしょー!!」
ヒカルは店を飛び出した。飛び出したところであてはない。あの男に会うのも
二度とごめんだ。ただ、自分の写真を見たくない。
「うえ・・・ひっく・・・」
あの時のことを思い出して、涙が出てきた。
 ヒカルは、道の真ん中で蹲って泣いてしまった。



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