初めての体験 Asid 33 - 40


(33)
 「と……や…」
本因坊が、か細い、だが、粘るような声でボクに呼びかける。
「ボク、素直じゃない人嫌いなんです。」
汚物でも見るような視線で、ボクは、老人を一瞥した。
「先生は、先ほどからウソばかり…ボクが子供だと思って侮っているんでしょう?」
「これ以上、ボクを騙そうとするなら、ボクはこのまま帰ります。」
老人が、上半身を無理やり起こし、苦しい姿勢から懇願した。
「ま…待て………言う…言うから……全部…」
本因坊は、「本当ですか?」と訊うボクに、何度も頷いて見せた。落ちた…!

 訊きたいことは、たった一つ。進藤のことだけだ。本因坊が何人棋士を連れ込んだか
なんてどうでもいい。この老人がどんな風に進藤を抱いたのか…それが知りたい。
「先生、進藤をどうやって汚したんですか?やはり、薬ですか?」
「そう…じゃ…薬をつかって…身体の自由を訊かなくして…」
 ボクは、詳しく訊ねた。どうしたことだろう?本因坊への怒りは変わらず胸の中に熱く
滾っているのに、老人の口から語られる事実に次第に興奮していく。この醜い老人が、
可憐な進藤をどのように蹂躙したのか想像しただけで…股間が…。―――ヘンだ…。
いくらボクでも、大事な恋人を酷い目にあわされたのに…こんな………進藤、ゴメン。


(34)
 本因坊の唾液や、精液で身体中をどろどろに汚されて…咽び泣く進藤。まるで、その場で
見ていたかの様に光景が浮かぶ。イメトレの成果が、こんなところで発揮されるとは…!
 しかし、本因坊から、ボクの想像を遙かに超えた事実を告げられた。二度目は老人一人では
なかった!指導碁ってそう言う意味だったのか?一体、進藤にナニを指導させたんだ!?
そして、その事実にますます激昂するボク自身……。ショックだ……。頭を強く振って、
想像をうち消そうとした。
 だが、きつく閉じた瞼の裏には、二人の男に押さえ付けられ、本因坊を無理やり受け
入れさせられる進藤の哀れな姿や、屈辱の涙に濡れる愛くるしい大きな瞳がリアルに映っていた。

 ボクは、老人を乱暴に転がすとその後ろの部分に、乱暴に己を突き立てた。進藤の受けた
屈辱はボクがはらす。本音を言えば、コンドームが欲しい。が、この際仕方がない。
「ぎゃあぁ!」
老人が、断末魔のような悲鳴を上げた。ボクが無情に突き上げる度に、老人は派手な
泣き声を上げた。ざ・ま・あ・み・ろ!…だ。
――――――――進藤を犯した老人を、今度はボクが犯している。
 どうしよう。何だか、倒錯的で妙な気持ちになってきた。最初はわめいていた本因坊も
今では、目は恍惚と潤み、口はだらしなく弛緩している。


(35)
 ボクは、老人が達する本当に直前に、自分のものをそこから引き抜いた。老人が悲痛な
叫びを上げた。中途で行為を止められ、老人は尻を高く上げた不自然な体勢のまま、ボクを
恨めしげに見た。ボクは、引き抜いた自分のモノをお手拭きで丁寧に拭って、ズボンの
中へ仕舞った。老人は、絶望的な表情でジッとボクを見つめている。
「これはね、お仕置きです。だって、先生、最初素直じゃなかったでしょ?」
にこにこ笑って、残酷な宣告を下す。
「後の始末は自分でやってください。そこの座布団でもつかって。」
「上手くできたら、次は最後までする事を、考えて上げてもいいですよ。」
極上の笑顔を本因坊に向けた。老人はボクの表情に何を見たのか、次の瞬間、畳の上に
大きな染みをつくっていた。

 ボクは、本因坊をSだと思っていた。元からMだったのか、隠れていたM因子をボクが
引き出してしまったのかはわからない。老人が、あれほど昂ぶっていた理由も、
もしかしたら薬のせいではなく、自分の置かれた状況に酔っていただけかもしれない。
 だが、これだけは断言できる。本因坊は、これからはボクの言いなりになるはずだ!
でも…どうせ、奴隷を手に入れるならもっと若い方が良かった。まあ、囲碁界の重鎮だから、
何かと便利ではあるな。使う気はないが。


(36)
 『ありがとう!桑原先生!』ボクは、嫌々ながらも、取り敢えず心の中で礼を言った。
 先生のお陰でボクは、これからどんな相手でも臆せずやっていけそうです。けれども、先生の
なさったことを、ボクは一生許しません。でもまあ、手に入れた進藤のイメージだけは、大切に使わせていただきます。

 いつものように、ボクの隣で進藤がシステム手帳にメモ書きをしている。鬱陶しそうに、
時折前髪を掻き上げた。その度、奇麗な額がボクの目に入る。額も頬も、ニキビ一つない。
ゆで卵みたいだ。
 ボクは、進藤のすべすべした頬を撫でた。
「んん…くすぐったい…」
進藤が、クスクス笑って身を捻った。可愛い声が、耳をくすぐる。本因坊の前では、
どんな声で囀っていたんだろう。
「どしたんだよ?」
いつまでも頬を撫でるのをやめないボクを、進藤が不思議そうに覗き込んできた。この
艶やかな肌の上を、本因坊の皺だらけの手が這っていたのかと思うとつい……。
「あ…」
頬から、首筋、背骨に沿って指を這わせる。そのまま、更に下へ…。
「ふ…あ…」
服の上から、軽く撫でているだけなのに、進藤は目を閉じてボクにしがみついてきた。
可愛い。ボクは、その場に進藤を押し倒した。
「と…塔矢…?」
戸惑っている。しきりに視線を、隣の部屋の方に向けた。うん、わかってるよ。寝室は
向こうだ。ここは、ボクの家だからね。良く知っているんだ。でもね、ここでしたいんだよ。


(37)
 ボクは些か乱暴に、進藤の服を剥いだ。小さな胸飾りが二つ現れた。薄紅色の小さな
突起は、まだ触れてもいないのに僅かに勃ち上がっていた。ここも老人は、堪能するまで
貪り尽くしただろう。ボクは、そこに顔を伏せて、荒々しく吸った。
「ひゃ…!あぁぁん…あ…」
ボクから逃れようとする進藤を、体重をかけて押さえ付ける。進藤の胸を舌で弄りながら、
手でジーンズの上から、股間を激しく揉み上げた。
「あ、あ、あ、やぁ…!」
進藤の身体が弓のように撓った。
 ファスナーを下ろし、中のモノを取り出した。先から蜜がどんどん溢れている。直に
扱くと進藤は身悶えて、身体を捻った。指を濡らす蜜をすくい上げるように竿を撫でた。
 そのまま、蜜を零す先端をぐりぐりと押すと、「ひ!」と彼は小さく悲鳴を上げて硬直した。
 荒く息を吐く進藤の目に、涙が滲んでいる。ボクのやり方を非難しているようだ。
ゾクゾクした。
 キスをしようと顔を近づけると、進藤は横を向いてそれを拒んだ。拗ねているんだね。
ボクは、その小さな顔を無理やり自分の方へ向けると、そのまま唇を塞いだ。顎を強く掴んで、
口を開けさせると、舌をねじ込んだ。抵抗する進藤の拳が、ボクの胸や肩を強く叩く。


(38)
 「や…やだ…!」
進藤が、激しく暴れ始めた。彼を抱いていた腕が、少し弛む。それを見逃さず、進藤は
転がるように逃げた。
まずい。怯えさせてしまった。
「う…うぇ…」
進藤は、壁際で、ボクに背中を向けて蹲っている。本気で泣かせてしまったようだ。
「ごめん…」 
宥めようと肩においた手を振り払われた。
 ボクは途方に暮れた。ボクは進藤の泣き顔が、好きだ。だから、つい泣かせたくなって
しまうのだが、それなのに、本気で泣かれると困ってしまうのはどういう事だろう。我ながら、
矛盾している…。
 「なんか…やなことあった?」
暫くして、漸く進藤が口を利いてくれた。相変わらず、背中を向けたままだった。
「うん…ちょっと…」
本因坊に腹を立てているのは、事実だが………ちょっと泣かせてみたかっただけとは、
進藤には言えない。
「……オレ、あんなのヤダ…いつもみたいに優しいのがいい…」
こう言われては、逆らえない。惚れた弱みだ。ボクは奴隷を一人手に入れたが、自分も
進藤に対しては、心理的に奴隷の立場にあると思う。


(39)
 ボクは、進藤を寝室へ連れていった。そして、望むとおり彼を優しく扱う。
「あ…ん…塔矢…」
進藤がボクに、キスを強請った。さっきはあれほど抵抗したのに…。やはり、未熟な
ボクがあんな真似をするのは、早すぎたのだ。真の達人なら、あれを暴力とは感じさせなかった
はずだ。
 いつまでたってもキスをしようとしないボクに焦れて、進藤が自分から唇を押しつけてきた。
甘い吐息に頭が痺れた。侵入してきた小さな舌を、思い切り吸い上げた。進藤の身体が、
微かに震えた。
 優しく胸を愛撫すると、進藤は「…っ、あぁん…」と、可愛い声で喘いだ。可愛い。
本当に可愛い。こんなに可愛いと思っているのに、頭の中は老人に陵辱される進藤のことで
いっぱいだった。さっき泣かれたばかりなのに、ボクはまったく懲りていない。


(40)
 「あ!うぅ…あぁ――――――!」
進藤は、胸につくほど、足を折り曲げて、ボクを限界まで受け入れた。その表情は、苦しげだった。額に張り付いた髪を払ってやる。
「大丈夫?」
と、訊くと、彼は無理に微笑んで頷いた。いじらしくて涙が出そうだ。
 ゆっくり身体を揺する。
「は…あ…んん…」
感じているのか、苦しげだった表情に陶酔の色があらわれ始めた。
「気持ちイイ?」
ボクの言葉に、進藤は、恥ずかしそうに顔を逸らせた。
「あっ!」
ボクが深く突き上げると、進藤の身体が痙攣するようにビクビクと震えた。
「あ、あ、あ…あぁん、イイ…」
抽挿を早くする。進藤の身体が何度も跳ねた。
「あああ――――――!!」
進藤がボクを強く締め付けた。ボクは、彼の中に欲望の飛沫を迸らせた。

 ボクの胸に頭を凭れさせている進藤の可愛い寝顔を眺めながら、ボクは反省した。今日は、
些か早急すぎた。本因坊の話を聞いて以来、体の中がモヤモヤしていたって言うのもあるが、
進藤の顔を見たら急に堪らなくなってしまった。まだ、ロクな経験も積んでいないのに…。
 それに、結局、ボクは進藤には勝てないのだ。可愛く甘えられたり、泣かれたりしたら、
ボクは折れるしかない。それに、耐えることのできる鋼鉄の意志を持たなければ、ボクの
夢は叶わないのだ。
 進藤の髪を梳いてやると、くすぐったそうに身じろいだ。ボクは、進藤を抱き寄せると、
下克上の日が早く来ることを願いつつ眠りについた。

おわり



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