トーヤアキラの一日 34
(34)
ヒカルの強い口調に手の動きを止めたアキラは、ヒカルから顔を離して下を向き、荒く
なった呼吸を必死で整えようとしていた。ジッパーに当てられていた右手と、背中に
回されていた左手は、ほぼ同時に体から離れてヒカルの頭を挟む形で大きな木に当て
られた。一度高温になった溶鉱炉の火が中々消えないように、一度エンジンのかかった
欲望を抑える事は難しく、アキラは顔をしかめて必死で何かに耐えているようだった。
「ごめん・・・・・」
暫くして顔を上げたアキラは、そう言いながら心配そうにヒカルを見る。
ヒカルは顔を上気させて、放心状態で呼吸を整えていたが、ゆっくりアキラを見ると
小さな声で囁くように言った。
「二人っ・・・になりたい・・・」
良く聞こえなかったアキラは耳をヒカルの口に近づけて問う。
「えっ?」
「トーヤぁ、二人っきりになりたい・・・・ここじゃいやだよ」
てっきり行為そのものを拒否されたと思っていたアキラは、驚きで大きく目を見開いて
ヒカルを見る。その潤んだ瞳から、ヒカルが行為の続きを要求している事が分かり、
一度鎮まりかけていた欲望が再びアキラを支配して、ヒカルを強く抱き締めた。
頭に血が上って、思考がまとまらなくて、二人だけになるにはどうしたら良いのか
すぐには分からないでいると、ヒカルがアキラに体を預けながら、耳元で言う。
「お前の家はダメかな・・・・」
「?!!・・・うん、そうだね。ボクの家に行こうか。いい?」
「うん・・・・」
アキラは体を離して、ヒカルの顔をもう一度見ると、ヒカルは潤んだ瞳をアキラに向けて
照れたように微笑んだ。
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