少年王アキラ 34
(34)
アキラ王の元へと戻ったオガタンは、馬券を差し出しつつ声を掛ける。
「時に我が王よ。いつも単に万馬券を狙うだけではつまらないと思われませんか?」
「どういう事だ?」
オガタンの言に興味を引かれたように、少年王は顔を上げた。
「この私めと勝負を致しませんか?」
「…勝負?」
「そうです。使用金額の上限を定め、最終レースまでにどちらがより多くの金を手に
しているかを競う。勿論、勝負ですから敗者にはそれなりのペナルティを科せると
言うことで、いかがです?」
勝負と聞き、アキラ王の体内に流れる生まれついての勝負師の血がたぎる。
「面白そうだな。ところで、そのペナルティとは一体どんなものなのだ?」
「そうですね…私めが勝った時には、アキラ王に何でも一つ望みを叶えていただける
というのは?」
「いいだろう。では、ボクが勝った時のペナルティだが…」
口元に軽く握った手を沿えて考え込むアキラ王に、すかさずオガタンが口を挟む。
「先程の続きを教えて差し上げましょう」
その言葉を受け、つづき…と口の中で呟きアキラ王は小首を傾げる。
やがて思い当たったのか、大きく頷くと嬉しげに微笑んだ。
「よし、それでいい!いざ勝負だ、オガタン!」
その返答を聞いたオガタンの眼がキラリと光ったのにアキラ王は気付かなかった。
だが、アキラ王から放置プレイ中で悲しみに暮れる座間にはオガタンの思惑が読めた。
即座にそれを進言しようと前に進み出かけたが、途中で足が止まる。
――王が万馬券を取れなければ、お仕置きが待っている…!
先だって言われた言葉を思い出したのだ。アキラ王がみすみすオガタンの手に落ちるのを
黙って見ている事と、自分に与えられる快楽を放棄する事…究極の選択で身動きが取れない。
座間はその場で躊躇している内に、やがてジレンマから恍惚とした表情で新たなる甘美な
世界へと旅立ってしまった。
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