Shangri-La第2章 34


(34)
森下の研究会が終わり、棋院前で和谷と別れたヒカルが
ポケットの携帯を取りだすと、諦めつつも期待していた
アキラからのメールがあった。
突然ぱったりと電話が来なくなったり、昨晩電話に出なかった理由を
変に勘ぐってしまったが、忙しくしている自分に気を使ううえに
昨日はたまたま疲れていて目が覚めなかっただけなのだろう。

自分でも何故こんなにアキラのことを気にかけてしまうのか
ヒカルには良く分かっていない。
ただ、自分にしか見せない、子供のような無邪気さや素直さが
心を捕らえて離さず、つい、甘やかしたくなってしまうのだ。
大体、どうしてアキラは自分にそんな姿を見せるのか、
その理由さえ全く見当がつかない。
だけどそれがアキラなりの信頼の証だという事は分かる。
ヒカルも、アキラにそんなふうに頼られて、悪い気はしなかった。

メールには、
 『昨日はごめん。時間が空いたら電話をくれないか』
とあり、ヒカルは迷わずアキラに電話をかけた。
今日のアキラは、いつものとおり1コールで電話を取った。



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