失着点・龍界編 34


(34)
ヒカルは三谷とエレベーターで上がり、止まった所で降りるとそこはビジネス
ホテルのように個室が列んでいた。その内の一室に入る。ベッドと鏡のある
洗面台とシャワー室だけの殺風景な部屋だった。
そのベッドに三谷は腰掛けた。安っぽいスプリングが軋む音をたてる。
「あれがカメラだから」
三谷の言葉の意味が分からずヒカルが怪訝そうに天井の片隅のそれを見る。
「つまり…オレとお前のsexを連中に見せるって事。」
ヒカルはカッとなった。
「言う事を聞かないと、先に来たあいつがどうなるか分からないってさ…」
ヒカルは怒りで体が震えた。
「…塔矢はどこに…?まさか、あのマンション…」
「…たぶん」
ヒカルは足元が崩れるような感覚がした。自分があんな目に合い、
三谷がああいう事をされたあの場所に、アキラが…。
とにかく今は三谷の言う通りに指示に従うしか他になかった。
三谷と向き合い、複雑な思いで見つめ合う。が、意を決したように
ヒカルは三谷の肩を掴むと顔を引き寄せた。

さかのぼる事1時間半程前―。
ヒカルが最初に連れて来られたマンションの一室。
雨戸が閉められた和室の中で、アキラは沢淵と碁を打たされていた。
その和室の隣に中央にベッドがある洋室があり、その洋室の向こうにある
玄関のドアの所に一人、見張りの男が立っていた。



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