失着点・展界編 34


(34)
伊角の言葉に、ヒカルはすぐに返事をする事が出来なかった。
「…勝手な言い分だと思うだろうけど…。」
伝言を伝えるだけの役目の伊角が、申し訳無さそうにヒカルを見つめる。
アキラが帰国してくるのはいつだっけ、とヒカルは考えた。アキラの事だ。
帰って来たその日の夜、アパートの部屋で待ち続けるだろう。当然ヒカルが
やって来ると信じて疑わずに。…自分だって、会いたい。今すぐ会いたい。
「…ごめん、それは…」
俯いてヒカルが小さな声でそう言いかけた時だった。
「和谷の両親、離婚するかもしれないんだ。」
唐突に切り出され、ヒカルは驚いて伊角を見た。
「えっ…?」
「元々あまり仲が良くなくて、和谷がプロになった事で母親が決意した
らしいんだ。父親が他の女の人のとこ行ってるとかで…。それが原因で、
和谷が小さい時から相当ひどい夫婦喧嘩が何度もあったって聞いた。」
どう反応したら良いのか分からずヒカルは黙って聞いていた。
「あいつ、今すごく精神状態が不安定なんだよ。強気に見えるけど、本当は
すがりつくものが欲しいんだ。あいつって年上の人に人懐っこいだろ。」
ヒカルはコクンと頷いた。
「塔矢アキラを目の仇にしていたのは、うらやましかったんだと思う。
存在感のある父親がいて、大切にされてて…。囲碁の才能も…。そして…」
伊角はヒカルをジッと見つめた。ヒカルはドキリとした。
「…和谷が本当に欲しいと思うものを全て塔矢アキラは持っている…。」



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