交際 35 - 36


(35)
 「―――――――――――――!」
自分の体重で、より深く社を受け入れることになり、その痛さのためかヒカルの顔面は蒼白だった。
 社は宥めるように、背中を撫でたが、ヒカルは「痛い」と涙を流し続けた。ほんの少し
身体を動かしただけで、
「や…動かないで…抜いて……抜いてったら…!」
と、両手で社の肩を叩いて訴えた。本人は思いきり打っているつもりだろうが、まるで
力が入っていない。

「進藤…塔矢とヤッっとるんやろ?」
 あまりにヒカルが痛がるので、不思議に思って訊ねた。自分は確かに男に慣れていないが、
乱暴にしたつもりはない。むしろ、かなり大切に扱ったつもりだ。
 「……い…一…回…だけ…」
ヒカルは、しゃくり上げながら答えた。

――――――――い、一回やと―――――――――!!
経験が少なそうだとは思ったが、まさか一度しかヤッたことがなかったとは……
『塔矢のヤツ、こんな可愛いのんと一緒におって、よおガマンできるわ……』
泣いているヒカルを可哀想だと思いながら、社は嬉しさがこみ上げてくるのを止めることが
出来なかった。


(36)
 「社……?」
ヒカルが、クスクスと笑う社の顔を不思議そうに覗き込んできた。涙に濡れた子犬みたいな
瞳。膝の上に抱えていても、まだヒカルの方が目線が低い。顔も身体もすべてが、小作りで
愛らしかった。その小さな唇から、震えるような息が吐かれている。ヒカルは社に
か細い声で訴えた。
「ね…抜いてよ…お願いだから…」
ヒカルの小さな身体を自分の方へ引き寄せ、耳元で囁いた。
「…………堪忍な。痛かったら、殴っても噛みついてもかまへんから……」
今さら止めることなんて出来ない。言うが早いか、社は、ヒカルの身体を思い切り揺さぶった。
「や!や、あ、あ、やぁ――――――――!」
腕の中でヒカルは、掠れた叫び声を上げた。社から離れようと、必死で身体を突っぱねた。
「やだ、いや、たすけて…とうや…とうや…」
ヒカルは、泣きながらアキラに助けを求めている。膝の裏から片方の腕を通し、残った
腕で、ヒカルの腰を支えた。そのまま身体を持ち上げ、落とす。
「や―――――――――――――――」
ヒカルが社の肩に爪を立て、頭を激しく振った。涙が、二人の首筋や胸を濡らした。
「やぁ、やだ……と…やぁ…たすけてぇ…」
 泣き叫ぶヒカルを無視して、身体を揺する。
『スマン…進藤…』
社は自分の快感を追うのが、精一杯だった。理性などとっくの昔に、雲の彼方に吹き飛んでいる。
苦しげな息遣い、小刻みに震える身体、頬をつたう涙さえも、社に快い刺激を与えた。
 ヒカルが喉を震わせて叫ぶ度に、社を強く締め付ける。
「ハァ、アァ、やだよぉ…」
社はヒカルの華奢な身体を、骨が折れるかと思うほどの力で抱きしめた。
 「ああ!あぁ…」
自分とヒカルのうめき声が重なった。彼の肩に額を押しつけたまま、社は、暫く動くことが
出来なかった。



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