パッチワーク 35 - 36


(35)
芦原 2013

娘のゆかりとオセロをしていると電話が鳴り妻がでた。
「あら、アキラくん」
妻の声が明るい。
先日退院し箱根の先生宅で療養を続けているアキラからの電話だったらしい。

娘とのオセロは最初は八子おいていたが、五回連続で勝てば一子ずつ減らしてゆく
約束で今日から三子になった。
娘は一つ空いている隅を取ることに集中して全体を見ることができずこちらの大勝だった。
二局目が終わったところで妻が
「アキラ君の彼女じゃないの。今度紹介してね。」
と言って受話器を置いた。
「訊かなかったの」と妻に尋ねると「明日対局があるって言うんだもの」
とソファに座りクッションを抱き潰しながら応えた。
拗ねている。アキラに聞きたいことがあったのを我慢したせいだろう。
ちょっと、かわいい。
「じゃあ、明日対局のあとで訊いてみるよ」
十連勝で五子から三子まで減らしたのに二連敗になりふくれっ面の娘が
また石を並べはじめた。三連敗になったら口を利いてくれなくなりそうなので
「なんで上手くゆかなかったのか「検討」をしようか。」と娘に言った。
自分の娘に「天使ちゃん」なんて呼びかける緒方さんほど親ばかではないつもりだが
オセロのせいで娘が口を利いてくれなくなるのは辛い。


(36)

妻が気にしているのはアキラが入院している間の費用を払い、服などを用意していた女性が
妊娠していたからだった。

アキラの住むマンションの管理会社から碁会所にアキラが救急車で運ばれたと連絡が入ったのは
アキラの住むマンションのオーナーでアキラの母親である明子夫人が先生と一緒に海外に
いることが多いので緊急連絡先を碁会所にしていたからだ。
夫人は箱根のマンションに滞在中だったが先生が自宅安静中の今、詳しいことが
わからないまま取り乱した連絡をして夫人に心労が重なることを懸念した。

管理会社からの連絡で運ばれた病院に妻が向かったが家族ではないからと面会が許されなかった。

新宿御苑のマンションから近くの病院ではなく北区のそれも拒食症の専門外来がある病院に
運ばれたのも不思議だったが運んでくれた消防署に妻がお礼の品をもっていって訊いたところだと
同乗していた進藤君が病院に直接頼んで病室を確保したとのことだった。

連絡をもらって妻が病院に駆けつけたときには入院に必要な物も進藤君が救急車に
乗ったときに既に用意していたし、何日か分の費用も既に病院に支払われていた。

その後、アキラが意識を取り戻し面会できるようになったがひどくやつれていて驚いた。



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