無題 第2部 36


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アキラが次に目を開けた時、そこには彼の目を覗き込む緒方がいた。
「あなたは…だれ…?」
今までに知っていたのは、眼鏡の奥から覗く皮肉そうな眼。
幼い自分を抱き上げてくれた時の優しい慈しむような瞳。
けれど、では、これはいったい誰だ?
見た事もない、熱っぽい瞳で自分を見詰めている、この瞳はいったい誰のものなのだ?
知らない。こんな人は知らない。
アキラはそう思いながら手を伸ばして薄茶色の瞳を縁取る睫毛にそっと触れた。
「知らなかった…あなたの、瞳の色…」
初めて間近に見たその瞳の色は、不思議な色をしていた。
ゆっくりとその瞳が近づいてくる。
その圧力に耐え切れずアキラが目を閉じると、そのまま彼の唇が柔らかくアキラの唇を
覆った。アキラの手が彼の背にまわされ、その身体にぎゅっとしがみついた。



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