初めての体験 36
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どれくらい時間がたったのか、白川が戻ってきた。
「今日はもう講義がないので、ゆっくりしていいよ。どういうことか話して
くれるね?」
白川は、ヒカルの横に椅子を並べた。
「あ・・・あの・・・それは・・・」
ヒカルは口ごもった。白川は相変わらず優しい笑顔を浮かべて、ヒカルを見つめていた。
白川の顔をまともに見ることが出来ずに、ヒカルは俯いた。
「もしかして・・・これのこと?」
白川がテーブルの上に何かを置いた。それを見て、ヒカルははじかれたように
顔を上げた。
「せ・・・先生・・・それ・・・!」
ヒカルは青ざめた。どうして、先生があの写真を持っているんだろう?
さっぱり訳がわからない。ヒカルは混乱した。
「ああ・・・やっぱりこれ君なんだ。なんか、似てるなとは思っていたんだけど・・・。
まさか、本人だったとはねえ。」
「棋士の間でもちょっと話題になっていたよ。進藤君によく似てるって。」
いつもの白川らしくない神妙な顔つきで言った。
「・・・!!先生!誰にも言わないでください!その写真、違う人だって言って・・・!
お願い・・・」
ヒカルは白川に縋り付いた。目に涙を浮かべて、唇をふるわせていた。
「どうして、こんなことになったのか話してくれるね?」
白川はヒカルの背をさすりながら、問いかけた。ヒカルはつっかえ、つっかえ理由を
話し始めた。男に拉致されたこと・・・。廃ビルで犯されたこと・・・。
知らないうちに写真を撮られていたこと・・・。
「そうか・・・可哀想に・・・」
「・・・?せ・・・先生?」
背中を撫でていた白川の手が、ヒカルの首筋や脇腹まで触れてきた。
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