初めての体験 Asid 36
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『ありがとう!桑原先生!』ボクは、嫌々ながらも、取り敢えず心の中で礼を言った。
先生のお陰でボクは、これからどんな相手でも臆せずやっていけそうです。けれども、先生の
なさったことを、ボクは一生許しません。でもまあ、手に入れた進藤のイメージだけは、大切に使わせていただきます。
いつものように、ボクの隣で進藤がシステム手帳にメモ書きをしている。鬱陶しそうに、
時折前髪を掻き上げた。その度、奇麗な額がボクの目に入る。額も頬も、ニキビ一つない。
ゆで卵みたいだ。
ボクは、進藤のすべすべした頬を撫でた。
「んん…くすぐったい…」
進藤が、クスクス笑って身を捻った。可愛い声が、耳をくすぐる。本因坊の前では、
どんな声で囀っていたんだろう。
「どしたんだよ?」
いつまでも頬を撫でるのをやめないボクを、進藤が不思議そうに覗き込んできた。この
艶やかな肌の上を、本因坊の皺だらけの手が這っていたのかと思うとつい……。
「あ…」
頬から、首筋、背骨に沿って指を這わせる。そのまま、更に下へ…。
「ふ…あ…」
服の上から、軽く撫でているだけなのに、進藤は目を閉じてボクにしがみついてきた。
可愛い。ボクは、その場に進藤を押し倒した。
「と…塔矢…?」
戸惑っている。しきりに視線を、隣の部屋の方に向けた。うん、わかってるよ。寝室は
向こうだ。ここは、ボクの家だからね。良く知っているんだ。でもね、ここでしたいんだよ。
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