うたかた 36


(36)
 それから数日、ぱたりと由香里の名前を表示しなくなったケータイの画面を見つめて、冴木は重い溜息をついた。
 ヒカルとは何もなかったが、由香里との約束がなければ自分は確実に『何か』をしていただろう。
(魔が差したってやつだろうな…。早いうちに由香里に謝っておこう。)

 意外にも由香里は怒っていなかった。
 この間は私も大人気なかったわ、と言って笑う彼女の声に安心し、次の研究会が終わる時刻に待ち合わせの約束をした。一気に肩の荷が下りた気がした。



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