初めての体験+Aside 36 - 40


(36)
 不意をついて、アキラが社を押し倒した。
「え?あ?」
社の頭はますますパニックに陥った。アキラの手が、社の下半身をまさぐった。
「ボクと進藤がしてるところ見て、興奮した?」
答えなくてもわかっているはずだ。痛いくらい張りつめたものをアキラの指は、弄び続けている。
「あ…やめ…」
息が乱れて、言葉が上手く出ない。喘ぐ社の首筋をアキラの舌が這う。
「可愛い…」
さっきヒカルとあれだけしたのに、今度は社を嬲ろうというのか?
「この前は楽しかったよ。社って包帯が似合うね…」
言うな!言わないでくれ!忘れたい悪夢だ!
 アキラの手慣れた愛撫に社は陥落寸前だった。その時、アキラを呼ぶ声が聞こえた。
「とおや――――」
気を使ってかそれほど大きな声ではない。ただでさえ浴室は遠いので、その声は本当に
微かにしか耳に届かなかった。だが、二人にとっては非常警報ぐらい大きく聞こえた。
「……残念…着替えを持って行かなくちゃ…」
社はホッと溜息を吐いた。『進藤…おおきに…』千回礼を言っても足りないと思った。
 アキラは口元だけで薄く笑うと、ヒカルの元へ向かった。静寂が訪れた。手早く昂った
ものを処理した。アキラの手によって寸前まで、引き出されていたので簡単だった。
『これって、やっぱ、塔矢にしてもろたことになるんやろか…』
落ち込みそうだった。


(37)
 暫くすると、二人分の足音が聞こえた。社は慌てて布団に潜り込んだ。障子の向こうから、
ヒカル達の声が聞こえる。
「塔矢…ホントに社、眠ってた?聞こえてなかった?」
不安げな甘い声に、少しハスキーな声が答える。
「大丈夫。殴っても目を覚まさないと思うくらいよく寝てたよ。」
………それは、起きていることを気取られたら殴るという意味か?一生、目を覚ますなと?
「……でも…」
「心配なら、明日聞いてみる?」
ヒカルは、慌てて首を振った…と、思う。障子に影が写っていた。アキラは軽く笑って
ヒカルを抱き寄せ、キスをした。そして、アキラは自分の部屋に戻っていった。
 部屋に戻るとヒカルは、社の顔を覗き込んだ。
「…よかった……よく寝てる…」
ホッとしたような声に、社は『ゴメン…ホンマは起きとるんや…』と謝った。
 ヒカルは布団に横になると、最初と同じように社の手を握ってきた。
「おやすみ」
社に向かって呟くと、すぐに眠ってしまった。
―――――可愛すぎるで!進藤!
やっぱり、自分はヒカルが好きだ!拗ねても笑っても…何をしていても可愛いと思う。
……それにしても…泣いているヒカルはすごく可愛かった。さっきのことを思い出して
しまった。アキラの気持ちがちょっぴりわかる。ヒカルにあんな風に泣かれたら………
ハッと我に返った。
『アカン!アカン!進藤を泣かせたいなんて思たら…』
 社は頭まで布団をかぶった。だが、ヒカルの痴態がちらついて、なかなか寝付けなかった。


(38)
 結局社は、その夜一睡も出来なかった。コレで、二日間眠っていないことになる。頭が
ボーっとして働かない。冷たい水で顔を洗い何とか目を覚まそうとした。
「おはよ。社。」
ヒカルが挨拶をした。爽やかな笑顔。眩しいくらいだ。
「お…はよ。」
見とれてしまった。どうして、ヒカルはいつもこんなに可愛いのだろう。眠気も一瞬で
吹っ飛ぶ。
「…あれ?社…目が赤い…」
ヒカルがジッと見つめる。まずい。バレる。
「ああ、今、目にゴミが入ってしもて…」
と、わざとらしく擦った。
「あ、擦るなよ。オレが見てやるから…」
ヒカルが社の手を押さえて、顔を覗き込む。
「ん〜〜よく、見えねえ…社、かがんでよ。」
社は、ヒカルの前に膝をついた。ヒカルは、社の頬に手を添えて、真上から目の中を覗いた。
ヒカルの大きな目がほんの数センチ先にあった。吐息が社の唇にかかる。
『わわわ…!やっぱ、進藤、睫毛が長い…』
「んん?わかんねえや…」
社は、ジッとしていた。今さら、ウソだとは言えない。だが、そろそろ目が乾いてきた。
痛い。でも、我慢だ。
 「!?」
不意にヒカルに目を舐められた。社は驚いて声も出ない。あまりのことに固まってしまった。
そこを今度はチュッとキスをされた。
「えへへ。ゴメン。だって…社、可愛いんだもん…きっと、今のでゴミもとれたよ。」
悪戯っぽく笑って、ヒカルは洗面所を出た。が、すぐに戻ってきて
「朝飯もう出来てるから、早く来いよ」
と、一言付け足してドアの向こうに消えた。
―――――進藤…!可愛いのはあんたや!!なんで、そないに可愛(かい)らしいんや…
一生、ヒカルについていく。どんな目にあわされても絶対諦めない。あらためて決心した。


(39)
 特に問題もなく午前が過ぎようとしていた。ヒカルはいつもの通り、明るく元気で、
アキラも社に何かをするということもなかった。だけど、社はそろそろ限界だった。頭の
中は、眠りたいという気持ちだけでいっぱいだった。ヒカルに昨日本当は起きていたことを
知られないように振る舞い続けたが、時間が経つにつれ疲労は濃くなっていった。
 『アカン…死ぬかも…』
必死に欠伸を噛み殺そうとしている社の側に、アキラが近づいてきた。
「眠そうだね?」
そう言った後で、さらに小さく囁く。
「進藤に知られたら……」
背筋に悪寒が走った。わかっている。アキラも怖いが、何よりヒカルが傷つくようなことは
したくない。何が何でも耐えてみせる。就寝時間まで、あと十二時間足らず。がんばろう。
 気合いを入れたところで、ヒカルと目があった。ニコッと笑いかけられて、身体中の
血液が沸騰した。力が漲るようだ。やっぱり、ヒカルは太陽だ。


(40)
 昼食は昨日の残りのカレーだった。カレーは二日目が美味いのだ。和やかに食卓を囲む。
ヒカルは色々なことを一人で喋り続けている。北斗杯のことや、家族のこと、友人のこと…。
くるくるとよく変わる表情は、見ていて飽きない。
 アキラも楽しそうにヒカルを見つめていた。ヒカルの罪のないおしゃべりに、音楽でも
聞いているかのように、うっとりと聞き惚れている。まるで一枚の絵のようだ。
『塔矢もこうやって見ている分にはええんやけど…中身は悪魔やからな…』
やっぱり、自分は天使がいい。ところが、その天使がとんでも無いことを口にした。
「なあ、社。この家…実は、座敷牢があるんだぜ。」
カレーを吹き出しそうになった。確かにこの古い家ならあるかもしれない。社は、まじまじと
ヒカルを見つめた。
「なーんて、ウソ!本気にした?」
クスクスと笑って、顔を覗き込んでくる。ビックリした。ウソなのか…。
「あるわけないじゃん!な、塔矢!」
ヒカルはアキラへ笑顔を向けた。その時、一瞬アキラから表情が消えた。だが、すぐに、
「…………………………………………………………当たり前じゃないか…ハハハ…」
と、ニッコリ微笑んだ。それから「進藤は冗談が好きだな」そう言って、ヒカルの額をつついた。
―――――な、な、な、な、なんや!?今の間は!!!!!!
真実を問いたいという好奇心と、それに触れてはならないという警告が鬩ぎ合う。
 北斗杯を前に、すでに疲労困憊の社だった。ヒカルの笑顔というエネルギー源がなければ
とっくにドロップアウトをしているだろう。ヒカルで潤い、アキラで枯れる。緑の森が
砂漠化していくような感じだ。 
―――――オレ…生きて帰れるんやろか……
ものすごく、不安になった。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル