とびら 第六章 36 - 40


(36)
ヒカルはホテルの部屋に入って大きく息を吐いた。とても疲れた。
今日はずっと気を遣いっぱなしだった。特にアキラに対して。
和谷といるほうが本当は心地がいい。一緒にふざけて楽しむことができる。
しかしだからと言ってアキラをほうっておけなかった。
だから新幹線で遊びに誘ったし、夕食も一緒にとろうと言ったのだ。和谷が嫌がっているの
は承知していたが他に方法はなかった。
今日のように三人で過ごすことは、もう二度とないだろう。
(部屋割り、越智と一緒で良かった……)
畳に敷かれた二組の布団を見ながらヒカルは思った。
もしアキラと和谷のどちらか一方とだったらと想像すると怖くなった。
残された一人はきっと激しい嫉妬の念に襲われるのだろう。
だがそんなことは起こらない。和谷は稲垣と、アキラは芦原と同室だからだ。
「越智のやつ、どこに行ってんだろう。風呂かな。あ、碁盤があるじゃん」
ヒカルはすみに置かれてあるそれに気付き、引っ張り出した。並べる棋譜は秀策。
こうしているときが一番心が落ち着く。そして守られているような気になる。
ほとんど終盤まで並べ終わったとき、ドアが開く音がした。
「あ、お帰り。オレも風呂に……」
越智だと思って話しかけたが、そこにいたのは和谷だった。
「和谷? 何か用かよ。越智は?」
「部屋を交換してもらった」
近付いてくる和谷にヒカルは怯えた。つまり和谷は今夜、自分を――――
「待てよ、和谷。嫌だよオレ」
「何で」
「だって塔矢に悪いから……」
そう言うと和谷はため息のように笑いを漏らした。ヒカルは胸が痛んだ。
「大丈夫だよ」
その言葉と同時にアキラが入ってきた。二人してやって来て、いったい何なのだ。
「進藤、今夜はどっちに抱かれたい?」
ヒカルはまるで死の宣告を受けている気分になった。


(37)
「なに言ってんだよ。どっちだなんて、そんなこと……」
ヒカルは戸惑いを隠せなかった。二人を交互に見る。
「きみが選べないなら、ボクたちが決めるよ」
ちらりとアキラは碁盤を見ると、それに手を伸ばした。あっという間に石を崩した。
和谷が白石を一掴みつかんだ。アキラは黒石を一つ、盤上に置く。
じゃら、と白石が手から放たれた。和谷が数えていく。石は偶数だった。
「俺だな」
そう言うと、和谷はヒカルを引き寄せた。
顔を挟まれたかと思うと、和谷の唇が触れた。いったん離れ、今度は深く口づけてくる。
首を振って逃れようとしたが、和谷が力をこめて抱きしめるので出来なかった。
ヒカルは和谷の背後にいるアキラを見た。アキラは無表情のまま、自分たちを見ている。
どうして動こうとしないのだ。このまま自分が和谷に抱かれてしまってもいいと言うのか。
ヒカルはすがるようにアキラを見つめた。
だがアキラはヒカルに背を向けた。身体が凍りつく。
「……と、や! 塔矢! 塔矢!!」
「俺とキスしてるときに、あんなやつを呼ぶな」
和谷が苛立たしげに言うが、ヒカルはアキラを呼び続けた。こんなのは嫌だ。もし今自分と
キスをしているのがアキラだったとしても、ヒカルは嫌だった。
「いやだ。こんなのは……ぁっ、いたっ」
忍びこんできた手に乳首を強くひねられ、ヒカルは目をぎゅっと閉じた。
かちゃん、と金属音がした。去ってしまったのか。
目尻に涙が浮かんだ。痛みのためか、それとも悲しみのためかよくわからなかった。
しかし衣擦れの音に、ヒカルはまぶたを開いた。
アキラはまだそこにいた。服を脱ぎ捨てながら、ヒカルのもとへやって来る。
「安心していいよ、進藤。先番は和谷だけど、ボクもきみを抱くから」
「そういうことだ」
和谷が低い声で言う。なにがそういうことなのだ。
(オレを和谷が抱いて、塔矢も抱く。つまり――――)
ヒカルは震撼した。二人は同時に自分を抱くつもりなのだ。


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戦慄が駆け巡る。なぜこんなことになるのかわからない。
だがとにかく二人から逃げねばならないと、ヒカルは直感した。
「嫌だ。絶対に嫌だ! 離せよ、和谷っ。離せ!」
蹴り上げた足が和谷のみぞおちに見事に入った。うずくまる和谷をヒカルは突き飛ばした。
すぐにドアへと向かうが、ファスナーをおろしたアキラが目の前に立ちはだかった。
「どけよ! おまえも蹴りを入れられたいのかよ! 言っとくけど、オレは本気だからな!」
「ボクも本気だ」
言うやいなや体当たりされ、ヒカルは畳に尻餅をついた。すかさずアキラが膝をふとももに
乗せ、身動きをとれないようにしてきた。
「おまえら、そのつもりだったのかよっ」
「そうだ」
あっさりと肯定され、ヒカルは唖然とした。
「もしさっき聞いたとき、どちらかを選んでいたら、そいつだけがきみを抱いた。でも」
痛みが鎮まった和谷がやって来たので、アキラは身体をずらした。
ヒカルは和谷が自分の肩を押さえつけるのを感じた。
「でも、きみは選ばないと思った。いや、選べないと言うべきかな。だからこうすることに
したんだ。言ってること、わかるか?」
「わかんねえよ!」
「同時に抱かれれば、嫌でも優劣がつくだろう? ボクと和谷はまったく違うんだからね。
きみは二人とも必要かもしれない。でもボクたちが必要なのはきみ一人だけなんだ。だから
無理にでも、一人は切り捨ててもらう」
ヒカルは正直に二人とつきあいたいと言った。それを和谷もアキラも承知してくれた。
だからヒカルはそれでこの件はとりあえず片付いたと思った。
しかしちっともそうではなかったのだ。
(オレは二人をこんなにも追い込んでいたんだ……)
身体の力が少しずつ抜けていく。
それを見計らったように、アキラがヒカルのジーンズを脱がせはじめた。
だがヒカルはやはり抵抗した。三人でするなんて正気の沙汰ではない。


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とにかくヒカルは足を、手を、全身をめちゃくちゃに動かした。
しかし二人がかりで押さえられているので、とうとう脱がされてしまった。
「おまえら二人とも大っ嫌いだ!」
「それならそれでいい。ボクが選ばれないのなら、二人同時に嫌われたほうがましだ」
アキラの静かな声音が背筋を震わせる。ヒカルは和谷を見た。和谷は黙りこくったままだ。
「和谷! おまえはどうなんだよっ」
「……これは塔矢が言い出したことだ」
だから何だというのだ。自分が聞いているのは和谷がどう思っているかということだ。
第一、アキラが提案したとしても、それに従うのを決めたのは和谷自身ではないか。
和谷は言い逃れをしている。
「ボクが押さえておくから、きみも脱いだら?」
ゆらりと立ち上がり、和谷は全裸になっていく。もう勃起しているペニスを見て、ヒカルは
自分にかぶさっているアキラに訴えた。
「本当にやめてくれよ。頼むから」
「それでまた今までの関係を続けるの? 悪いけど、もうそれは嫌だ」
「だからって、同時にすることないだろ!」
アキラはヒカルの手首をつかむと、自分のずぼんのなかへと入れさせた。
熱いものが触れた。アキラのそれもすでに獣と化していた。
「別々に抱かれて答えが出なかったんだ。ならやり方を変えるべきだろう?」
言いながらアキラは腰を浮かすと、ずぼんを取り去った。
気付くとすでに三人全員が裸となっていた。
「やり方って……!」
「もう準備ができたみたいだよ」
片手に小瓶を持った和谷がヒカルの脇に膝をついた。アキラは無理やりヒカルをうつぶせに
させた。和谷が腰をつかんで、尻を突き出させる。
「んあっ! やだっ……ぁ」
和谷の指がヒカルのなかに入ってきた。しかも一本ではない。ぐいぐいと複数の指がそこを
馴らしていく。思わずヒカルは目の前にいるアキラの腕に爪をたてた。
アキラの手がヒカルの顎をすくいあげた。
「舐めてよ」
わずかに開かれたヒカルの口に、硬いものが突っ込まれた。


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すぐに苦いものが口内に広がった。だがそれは慣れ親しんだ味だった。
嫌だと思うのに、自分の舌がちろちろとそれをしゃぶった。
「んくぅ……ふっ」
不意に腰を高く持ち上げられた。和谷が双丘を開き、その狭間に舌を這わせはじめたのだ。
指が犯していたそこに、今度は舌がすべりこんでくる。
「やだっ……やっ、あぁっ……あっ……」
「進藤、口が留守だよ」
言われてヒカルは素直にアキラのペニスを愛撫することに神経を集中させた。
快楽に溺れている。そんなことはわかっている。だが自分を止められない。
口がふさがっているので息がうまくできない。目眩がして、頭がぼんやりと熱っぽくなる。
ヒカルのそれもすでに勃ちあがっていた。
触れられてもいないのに股の間で直立したそれを、和谷が上下にしごく。
「あっ、待て……オレ、イク……っ」
そう言うと急に和谷はペニスから手を離した。振り返りたかったが、アキラが腰を動かして
ヒカルの口腔を蹂躙するので出来なかった。
羞恥心もかなぐり捨てて、ヒカルは自分の手を自身にやった。
だがすかさずそれをアキラが止めた。ヒカルはペニスを頬張っていたので、目で自分の意図
を伝えた。アキラはとても優しい笑みを浮かべて首を振った。
「何度もイクときみがつらい。和谷、きみも早くしろ。もう十分だろう」
自分をつかむ和谷の手が強くなった気がした。
「……あぁぁぁっ!」
後ろから一気に深く貫かれ、ヒカルは悲鳴を上げた。だがすぐにそれは途切れる。
口から外れたペニスをアキラがまた押し込んできたからだ。
しかし突かれるたびにペニスが口から出そうになる。両手でつかんで咥えるが、和谷が動き
はじめるとヒカルはそれどころではなくなった。
息を切らせながら、揺さぶりに身を任せる。身体が悦んでいる。
「あ、はぁっ……んん!」
えぐるように突き上げられ、ヒカルは絶頂を迎えた。
それと同時に生暖かいものが自分のなかに広がっていった。



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