クチナハ 〜平安陰陽師賀茂明淫妖物語〜 37


(37)
「そのお坊さんなら、山にいるよ。時々里に下りてきて、病人を治したり
有難いお経の話をしたりしてくれるんだ。シロはとっても利口な犬だから、
いつも薬籠を運んだりしてお坊さんを手伝ってるんだよ」
「この間なんか、お坊さんが庵に忘れ物したって云ったらシロが独りで山に走ってって、
ちゃんと足りない物取って来たもんな〜。シロはきっと、人間の言葉が解るんだ」
「三郎太の弟が池に落ちて溺れそうになった時、すぐに飛び込んで助けたのもシロだよ。
利口だし強いし、雪みたいに白くて綺麗だし、シロみたいな犬ならオレも欲しいや」
どうやらそのシロは童たちの間で人気者らしい。
光も動物はどちらかと云うと好きなほうだが、今はゆっくり話を聞いている暇がない。
気にかかっていたことを単刀直入に訊いた。
「あのさ、その坊さんって物の怪退治とか出来るか?オレいま訳あって、
そーゆーこと出来る人を探してるんだけど」

童たちは顔を見合わせた。互いに頷きあう。
「ウン、出来るよ。ねぇ」
「なんか具体的にこういう物の怪をやっつけたって話とか、あるのか?」
相手は明ですら敵わなかった強力な妖しなのだ。
いくら法力があると云っても、その辺の雑魚な物の怪にやっと勝てるくらいでは
勝負にならないだろう。
光の真剣な眼差しに只事ではない雰囲気を感じ取ったのか、
年嵩の童が真顔になって口籠もりながら云った。
「この村は平和だから、あまりそういう話は無いけど・・・街で物の怪に憑かれた人が
出ると、良くあのお坊さんが呼ばれるよ。物の怪退治の名人なんだって。
それに難波にいた時、なんか一年以上も街の人たちを苦しめてた凄い妖怪を退治して、
皆を救ったんだって噂だよ。オレが見たわけじゃないけど、
難波から来た行商人のおじさんもそう云ってたから、多分本当だと思う・・・」
「そうか・・・!」
もしそれが事実なら、その聖はクチナハに対抗し得る法力の持ち主かも知れない。
――賀茂!これでオマエ助けられるかもしんねェぞ!
気持ちが逸って、一刻も早くその聖に会いたいと思った。
 
 



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!