平安幻想異聞録-異聞- 37
(37)
それから2日がたって、ようやくヒカルもまともに身動きができるようになり、
二人は久方ぶりに揃って内裏に参上した。
――あの竹林の夜からは8日がたっていた。
内裏に行く前に、ヒカルは検非違使庁に顔を出し、長く休んでしまったことを
皆にわびる。
「なんか拾い食いしたんじゃないか」
「まじめに仕事しないから、ご先祖さまが怒ってバチをあてたんだ」
ヒカルの休みの理由を腹痛と信じて、好き勝手言う検非違使仲間達に
「オレ、一応病み上がりなのに、みんなでいいようにこづき回すんだよ」
と文句をいいながら、ヒカルは楽しそうだ。
ヒカルの屈託のない笑顔に、佐為もほっと気が緩むのを感じた。
(さて、後は…)
ヒカルは知らなかったが、佐為はその前の日の昼に賀茂アキラと会っていた。
内裏に行けば、座間と菅原がいる。
彼らとヒカルを遭わせたくなかった。
賀茂アキラが緒方などを通して、さりげなく訊きだした座間と菅原の
その日の動向と予定を頭に入れたうえで、彼らとなるべく鉢合わせすることの
ないように、佐為はアキラと相談して、その日の自分の行動予定を
組み立てていたのだ。
そして、それは今のところすべて上手く運んでいるように思えた。
夕刻まではつつがなく過ぎ、囲碁指南の仕事も無事に終わり、
さぁ退出、と、佐為が心の中で胸を撫で下ろしながら
ヒカルとともに内裏から大内裏へと渡る途中、ふたりは
予想外にたくさんの女房達に声をかけられることになった。
|