失着点・展界編 37


(37)
「おいおい和谷センセイ!、商売道具はもっと大事にしねえとなあ!」
和谷の右手の包帯を見るなり騒がしく河合が声をかける。和谷は舌を出して
頭をかいて見せただけだった。ヒカルは対局に集中するふりをして、しばらく
顔を上げなかった。そんなヒカルの隣に伊角が腰掛けた。
「…電話もらった時、うちで二人で打っていたんだ。あいつも『行く』って
言うから…。」
「う、うん。」
「和谷先生しばらく不戦敗だったけど、事故にでもあったのかい?」
対局相手が何気なく尋ねて来るが、ヒカルも伊角も言葉を濁しただけだった。
当の本人は、いつもと変わらない様子で向こうで5面打ちを始めている。
「和谷センセイ、そんな手で無理しない方がいいんじゃないですかい?」
「アハハ、いざとなったら左手で打ちますよ。なんならもっと一度に相手
してもいいんスけどね。」
その言葉を聞いてヒカルはカチンときた。伊角が頭を抱える。
「次からはあと2人追加参加してもらうよ!」
ヒカルは6人相手に打ち始める。和谷と目が合い、火花を散らさせる。
「伊角先生は何人相手してくださるんですか?」
「オ、オレは4人で…。」
碁会所の中での時はあっという間に過ぎて行った。
すっかり暗くなった夜道を、3人で歩く。
「…楽しかったな、今日。」
「…ああ。」
ヒカルが満足気に呟き和谷が自然に頷く。伊角がそんな二人を見つめていた。



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