トーヤアキラの一日 38
(38)
その声に弾かれた様にアキラは今迄にも増して、手と腰の動きを早めた。
すでに限界に来ていたヒカルは、身体を仰け反らせ、アキラの首に回した腕をきつく
締め付けながら最後の嬌声を上げた。
「んっっ・・・イク・・あぁぁぁぁっ───トーゃぁ!!あぁぁぁぁっっっ───!!」
ヒカルは体を硬直させるようにして、アキラの手の中に精を放った。
その瞬間の、我を忘れて全てを手放すようなヒカルの顔を見てアキラ自身も頂点に
達しようとしていた。断続的に痙攣して放たれるヒカルの生暖かい精液を手の中で
感じながら、アキラもまたヒカルの脇腹に中心部を押し当てたまま、下着の中に精を
吐き出した。顔を上に向けて目を瞑り、その快感を味わう。
「んっっっ、んっ!!」
その瞬間、ヒカルの背中に回されていたアキラの左手が緩み、ヒカルが支えを失って
体が壁に沿って崩れ落ちていく。アキラの首に回されていたヒカルの腕はダラリと
滑り落ち役に立たない。アキラが慌てて支えようとするがアキラもまた腰に力が、
入らないので、一緒になって崩れてしまった。
ヒカルは壁際に足を投げ出して座る格好になり、アキラは右手でヒカルの分身を
掴んだままヒカルの右横に正座する形になった。
アキラは心地よい脱力感の中で、初めて見る放心状態のヒカルの顔をじっと眺めていた。
首を少し傾けて壁にもたれる格好になっているので、前髪が垂れて顔の半分を隠している。
いつもは大きな目がクリクリと動いている瞳は閉じられていて、睫はうっすらと涙で
濡れている。頬は上気しているからか、廊下からの明かりのせいか、あるいは前髪の
色が映っているためか、オレンジ色に光って見える。口は少し開けられて、荒くなった
呼吸を整えるために、熱く甘い吐息を漏らし続けていた。
背中に当てられたアキラの手は、ヒカルが呼吸するたびに一緒に動く。熱を持った
その背中の肌は、ツルツルとしていて気持が良かった。
それらのヒカル全てを手中に納めたのに、自分が欲しかった物が他にあるような気が
してアキラは満足し切れなかった。
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