白と黒の宴2 38
(38)
「お…が…」
後は言葉にならなかった。しゃくりあげ、肩を震わせてアキラは声をあげて泣いた。
「あ…うっ、ううっ…」
ただ悲しかった。緒方にそういう扱いを受けても仕方のない自分が惨めだった。
緒方が強く突き上げる毎に雫がいく粒もアキラの頬を伝い、シーツを濡らした。
すると激しかった動きが、少しずつゆっくりとなり、止まった。
静かになった室内で、何かがアキラの耳に届いた。それはほんの僅かだったが、緒方の呼気に
ため息のような、唇を噛み締めて声を抑えるような気配を感じた。アキラはハッとなった。
…緒方さんも、泣いている…?
緒方の顔に触れて確かめる事は出来なかったが、何となくアキラはそう感じた。
何故目隠しをされたのか、アキラは理解した。
脆い程にバランスをなくし冷静な自分を保てず苦しんでいる緒方がそこにいた。
こういう形で何もかも終わらせようとしている。
二度とこの場所に来る気を起こさぬようあえて手酷い仕打ちや言葉を与えようとした。
酒の力を借りて、それらの行為をしようとした。
不器用な人なのだと、つくづくアキラは思った。そして自分達は似ているのだと…。
「…緒方…さん」
ぴくりと、緒方が反応する。
痛みの限界を通り越し、殆ど感覚がなくなったはずの体内で緒方の心音を感じた。
「…それでもあなたを憎む事は…ボクには出来ません…」
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