パッチワーク 38
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自分の対局が終わってすでに対局の終わっていたアキラを捜したが見つからなかった。
出版部の前で白川先生と福井君、岡君が話していたのでアキラを見なかったか尋ねたところ。
岡君が「塔矢さんなら進藤さんと一緒に帰られましたよ。進藤さんのこと藤崎先生が向かえに
来ていたから三人で。」「藤崎先生?」名前に覚えがない女流の若手?
「藤崎先生は保育士さんです。僕が普及で行っている保育園の。産休でお休みしているって
聞いていたんですけど、おなかが大きくなってからお会いしたの初めてなのでびっくりしました。」
おなかが大きい?あっ、例の彼女だ「アキラの知り合いなのかな?」
白川さんが「藤崎さんなら進藤君の彼女ですよ。高校の頃から進藤君の家に下宿していて。
いま、進藤君のご両親、転勤で仙台にいらっしゃるから東京の家で二人で暮らしてるって
聞きましたけど。彼女も僕の教え子なんですよ。でも、おめでたなのは知らなかった。」
進藤君の彼女?
「ありがとうございます」
進藤君の彼女ね、考えても見なかった。
早く妻に報告しなきゃ。
家に急いで帰ると妻が待っていて第一声は「わかったのよ。進藤君の彼女だったのよ」
「何で知ってるの」思わず情けない声で言ってしまった。
スーパーで例の彼女を見かけて声を掛けようとしたら向こうから娘に声を掛けてきて
保育園で娘の隣のクラスの先生でそこに北島さんの息子さんのお嫁さんが声を掛けてきて
「芦原ゆかりの母」=「碁会所の市河さん」と知ってむこうから
「いつもヒカルがお世話になっています」と言ってきたので
きいてみたら進藤君に頼まれてアキラの世話をしていて、
あの病院は進藤君の親戚だったというのもわかった。
進藤君も入院するほどでないけれど体調を崩していたんだそうだ。
棋院で見かけたやつれた進藤君を思いだした。
これで謎は解けたし妻のご機嫌は治ったし万々歳だ。
パッチワーク 芦原 2013 了
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