初めての体験 Asid 38
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「や…やだ…!」
進藤が、激しく暴れ始めた。彼を抱いていた腕が、少し弛む。それを見逃さず、進藤は
転がるように逃げた。
まずい。怯えさせてしまった。
「う…うぇ…」
進藤は、壁際で、ボクに背中を向けて蹲っている。本気で泣かせてしまったようだ。
「ごめん…」
宥めようと肩においた手を振り払われた。
ボクは途方に暮れた。ボクは進藤の泣き顔が、好きだ。だから、つい泣かせたくなって
しまうのだが、それなのに、本気で泣かれると困ってしまうのはどういう事だろう。我ながら、
矛盾している…。
「なんか…やなことあった?」
暫くして、漸く進藤が口を利いてくれた。相変わらず、背中を向けたままだった。
「うん…ちょっと…」
本因坊に腹を立てているのは、事実だが………ちょっと泣かせてみたかっただけとは、
進藤には言えない。
「……オレ、あんなのヤダ…いつもみたいに優しいのがいい…」
こう言われては、逆らえない。惚れた弱みだ。ボクは奴隷を一人手に入れたが、自分も
進藤に対しては、心理的に奴隷の立場にあると思う。
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