初めての体験 38 - 41


(38)
 白川は、ヒカルの服を全て剥ぎ取った。遠慮することなく、ヒカルの全身を
撫でさする。ヒカル自身にも、指で舌でなぶり続けた。軽く指で輪を作り、さすり
上げながら、先端を舐めた。
「・・・ん・・・ふぅ・・・あぁん・・・」
ヒカルは甘い声を止めることが出来なかった。全身を震わせ、悶え続けた。
 突然、白川がヒカルへの愛撫をやめた。ネクタイを外し、それをしならせると、
ヒカルを俯せにして後ろ手に縛り上げた。
 あっという間の出来事で、抵抗する暇もなかった。
「!!先生!」
ヒカルは大きく目を見開いて、肩を押さえ付けている白川を見た。
「うん・・・やっぱりこの方がそそるよ・・・」
白川がニコニコ笑って言った。いつもの白川とは違う。あの男に感じたのと
同じ恐怖がヒカルを襲った。
「や・・・やめてよ・・・せんせい」
ヒカルは泣きそうになった。こんなことしなくても、逃げたりしないのに・・・。
どうして・・・。
 今にも泣き出しそうなヒカルの頼りない表情を見て、白川は微笑んだ。
「可愛いよ・・・進藤君。写真じゃなくて、本物の泣き顔が見たかったんだ・・・」
そう言いながら、骨に沿って背中を舐めた。恐怖と快感で体が震えた。
「せんせ・・・外してよ・・・お願いだからぁ・・・」
遂にヒカルは泣いてしまった。涙を流して哀願するヒカルの顔を恍惚とした表情で
白川は見つめた。ヒカルの腰を片手で固定し、その双丘を左右に割り開くと、
そこに舌を這わせた。
 「やだぁ・・・!やめて・・・やめってたらぁ・・・!」
ヒカルが泣き叫んだ。指がヒカルの内部に侵入した。ヒカルは、起きあがろうと
上体を反らせたが、白川に背中を押さえ付けられた。それでも、爪先立ちの足を
じたばたさせたが、大した抵抗にはならなかった。その間も指は出入を繰り返した。
ズニュズニュというねっとりとした音がヒカルの耳に入ってきた。


(39)
 「ん・・・はあ・・・」
ヒカルの息が荒くなった。顔は涙と汗でぐちゃぐちゃだ。全身が朱に染まり、
その姿は息を飲むほど色っぽい。
「あぁん」
白川が指を引き抜いた。ヒカルは口をパクパクさせて、息をしている。
「し・・・進藤君・・・」
白川は上擦った声を上げ、ヒカルの中に一気に押し入った。
「あ―――――――――――っ!」
先ほどまでとは打って変わった激しさで、白川はヒカルを責めた。ヒカルの体が
テーブルの上で、がくがくと揺れた。
「あ・・・あん・・・ん・・・ひぃ・・・あぁ――――」
ヒカルは大きく体をふるわせ、そのまま意識を失った。と、同時に体の中に
熱いものが放たれた。



 白川・・・外柔内剛。人は見かけによらないの典型。

 ヒカルは手帳にメモ書きをして閉じた。そして、傍らにいるアキラに声をかけた。
「なぁ・・・塔矢・・・この間の写真・・・」
「写真って何のこと・・・?」
アキラが白々しくとぼけた。アキラはきっと口を割らないだろう。
「・・・なんでもねえ・・・」
写真のことを皆に訊ねて回りたい気もしたが、藪蛇になりそうなのでやめた。
『白川先生に詳しいこと聞いときゃ良かったぜ・・・』
ヒカルは大きく溜息をついた。

 「ふう・・・写真を進藤に見られたのは失敗だったな・・・」
隠し場所をかえた写真を取り出しながら、アキラは呟いた。
「進藤を縛るなんて可哀想で、できないからなぁ・・・」
そっくりさんの写真で我慢しよう・・・。
「でも『・・・・・・』と『・・・・・・』は見つからなかったからいいか・・・」
念のため、写真とは別に置いてある『・・・・・・』と『・・・・・・』の隠し場所に
アキラはチラリと視線をやった。何だか体が疼いてきた。
「新作希望のメールを出しておくか・・・」
アキラはパソコンを立ち上げた。


<終>


(40)
 ヒカルは地方のイベントに来ていた。今回、棋院から派遣された仕事はそこで指導碁を
行うことだった。本当は、適当な理由をつけてさぼりたかった。しかし、ヒカルとてプロ
の棋士…我が儘は言えなかった。ヒカルには手合いをさぼり続けた前科もある。これ以上
睨まれるのはゴメンだ。佐為がいれば、この退屈そうな仕事も楽しめただろうに…。
 「あーあ…せめて塔矢が一緒だったら…」
溜息をつきながら、席に着いた。もう客達は座って、談笑しながらヒカルを待っていた。
「よろしくお願いします。」
と、顔を上げて驚いた。目の前にいる二人の男性の顔に、見覚えがあったからだ。
「あ…あのお兄さん達…」
ヒカルは言葉を続けることが出来なかった。この二人は知り合いだったのか…。
あの後、桑原とは何もなかったのだろうか…?桑原の性癖をヒカルは身をもって知っている。
無事ですむとは思えない。しかし、いくら桑原でも、一般人に手をだすだろうか…?


(41)
 固まってしまったヒカルに嘉威が声をかけた。
「始めないんですか?」
ハッとヒカルは我に返り、慌てて碁石を手にとった。嘉威と俊彦の前にある盤に交互に
碁石を置いていく。子供といえどもヒカルはやはりプロ、嘉威達ではいくら石を置いても
太刀打ち出来ない。
 ヒカルが一手一手に解説をしていく。二人は、ふんふんと頷きながら真剣に聞いている。

「進藤プロ…オレ達…じいさんにやられっちゃったよ…」
指導碁が終わった後、突然、ぽつりと俊彦が呟いた。ヒカルはやっぱり…と思った。俊彦がどういう経緯で
桑原と関係したのかはわからないが、嘉威の方はだいたい見当がつく。
「オレ、あの時、あんたが何であんなに瞬きしているのかわからなかったけど…あれって
 教えてくれていたんだな…」
ありがとう…と、嘉威が小さく礼を言った。
「あんたも同じ目にあったんだ?」



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