少年王アキラ 39
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「さっきから黙って聞いていれば、一体誰に向かって口をきいているんだ!…このボクは
少年王だぞ!?王たる者への暴言の数々!こんな屈辱は初めてだ!!」
今にも地団駄を踏み出しそうな勢いで叫ぶアキラ王をオガタンはじめ、周囲の人々は驚い
た表情で見つめた。先のオガタンの発言程度なら座間がいつも言っている。
だが、何故今回はこんなにもご立腹なのか…?
それにはアキラ王なりの理由があった。一応今回のレースで万馬券を取ることは出来た。
しかし、始めに倉田でアヤが付き、更にはオガタンとの勝負にまで負けてしまったのだ。
――そんなケチのついた金でレッドへのプレゼントなど買えやしないじゃないか…
レッドにぴったりのピュアな金じゃなきゃダメなんだ!
そもそも賭け事で得た金銭が果たしてピュアかどうかはこの際問題ではないらしい。
愛するレッドに紅白碁石を贈ることを夢見て、本日のレースに臨んだのに夢は儚くも
散ってしまった。
そんな落ち込んだ気分の時に浮かれたオガタンの言葉を聞き、積もり積もった怒りが爆発
したのだ。
単なるヤツ当たりとも言えるが、オガタンの普段の彼らしからぬタイミングの悪さも重な
った結果である。
「…そこまで言ったんだ。当然覚悟は出来ているんだろうな、オガタンよ?」
突然声を落とし囁くように言うと、手に持った鞭をもう一方の掌に軽く打ちつけながら
オガタンへと歩み寄る。
少年王のかつてない程の怒りをその身に浴びて、オガタンの背中を冷たい汗が伝う。
オガタンの真正面で歩みを止めたアキラ王は、弄んでいた鞭をビシリとオガタンの眼前に
衝き付けた。
「座間!オガタンを公開処刑だ!!」
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