平安幻想異聞録-異聞- 39


(39)
(できるだけ、彼らに会わないように計画したつもりでしたが、無駄でしたか)
佐為は胸の奥で深く溜め息をついた。
「お風邪をお召しになったとか? われわれは、かの『京の妖し』をめぐって、
共に妖怪退治をした仲ではありませぬか。お教えくだされば見舞いに参ったものを」
「これこれ、顕忠、あまり押しつけがましいのも、佐為殿が困るだろう。
 なにしろ、佐為殿が参内を休んでいた理由は風邪ではなく、お気に入りの
 検非違使の看病のためだと、もっぱらの噂……」
そう言って、座間と菅原の視線がヒカルに注がれた。
ヒカルが体を固くする。
わかってしまった。
座間と菅原は今、あの夜のことを思い出している。
自分たちの頭の中で、今、ヒカルの服をはぎ、思う様犯しているのだ。
ヒカルはこぶしを固く握りしめた。
手のひらに汗がじっとりとにじんでいるのが自分でわかった。
だけど、意地でも目線はそらさない。
目をそらしたら、負けだと思った。
(なんと、強い…)
その様子を隣りでみて、佐為が思う。
自分が同じ立場であったら、目線を合わせるどころか、
ここで同じ空気を吸っていることにも耐えられすに
この場から逃げ出しているだろう。



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