失着点・展界編 39
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ヒカルは体を固くした。だがそれは、
今までとは違いごく軽く唇どうしを触れあわせるだけのキスだった。
「…さよなら、進藤。」
和谷は淋し気な笑みを浮かべるとヒカルを残して走り去って行ってしまった。
ヒカルは黙って和谷の後ろ姿を見つめるしかなかった。
道路脇に腰掛けて待っていた伊角は戻って来たヒカルを怪訝そうに見た。
「あれ?和谷は?」
「…先に一人で帰った。」
「…何かあったのか?…まさか、あいつまた…」
伊角が咄嗟に公園の向こうを見た。和谷を追い掛けに行きそうな勢いだった。
「あ、ううん、…違うんだ。何もされていないよ。」
「え?そ、そう…?」
あれは別れのキスだったのだ。それに、自分のために伊角と和谷が仲たがい
するような事になるのも嫌だった。特に伊角には、自分が引き起こした今回の
件でこれ以上迷惑をかけたくなかった。自分で何とかしなければいけない。
「オレもここからは一人で…。伊角さん、心配かけてごめん。ありがとう。」
「進藤…」
やはり何かあったのでは、という不安そうな表情はしながらも、一人で帰りた
いと言うヒカルの気持ちを汲みとってくれて伊角はその場に留まった。
アキラは、明日、帰って来る。
だが一人で歩きながら考えても今夜中に事態を解決できる答えが見つかり
そうにない。それは自分が子供だからだろうか。
「…あの人だったら、何か答えを出してくれるだろうか…。」
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