交際 39 - 40
(39)
社は自分の胸に顔をすりつけて、喘いでいるヒカルの顔を覗き込んだ。相変わらず、
目に涙を浮かべているが、その涙は先程までのものとは違う。頬は紅潮し、呼吸は荒く
熱い。
「はぁ…やぁ…」
社の二の腕に添えられていたしなやかな腕が、優しく首に絡んできた。社は、ヒカルを
責める腰の動きを少し早めた。ヒカルの身体が、反り返った。
「…!あぁん…!やだ…とうやぁ…」
社が腰を打ち付ける度、ヒカルの口から、切なげにアキラの名前が漏れ出てくる。
「あ、あ、あ、とうや…とうやぁ…」
強くしがみつき、自らも腰を揺すりながら、
「とうや…とうや…好き…すきぃ…」
と、社の耳元で囁き続けた。
密着した胸にヒカルの勃ちあがった乳首が擦り付けられる。腹部に感じるヒカル自身は
これ以上ないくらい昂ぶっていた。甘い声。甘い吐息。すべてが社を酔わせた。ただ一点を除いて……。
社は動くのをやめ、自分にしがみつくヒカルの腕を振り解いた。
「…?や…とうや…なんで…?」
快感に支配され、焦点の合わない目でぼんやりと社を見つめる。突然、断ち切られた快楽に
焦れているのか、自分で小刻みに腰を揺さぶった。ヒカルの華奢な肩を強く掴んだ。
「オレは塔矢やない…!社や!」
「……やしろ?」
「そうや…」
指が肩に食い込んでいる。ヒカルが顔を蹙めて、そこから逃れようと身じろいだ。
「やぁ…痛い…痛いよ…離して……」
「アカン…オレの名前ゆうてみ?」
泣き始めたヒカルに顔を寄せ、優しい声で問いかけた。
「…う…や…やしろ…」
しゃくり上げながら、ヒカルは答えた。ヒックヒックと喉の奥が鳴っている。
「ええ子や…」
社は満足げに笑うと、ヒカルを再び突き上げ始めた。
(40)
「あ…はぁ……」
社にあわせて、ヒカルも動いた。二人ともかなり追いつめられていた。
「あ、あ、もっと…もっと…して…」
ヒカルの甘く切ない声が自分を煽る。社はヒカルを強く抱きしめると、二、三度大きく
突き上げた。
「あ…あぁ―――――――」
ヒカルはか細い悲鳴を上げ、身体を痙攣させた。社はその震えがおさまるまで、ヒカルを
抱く力を弛めなかった。
脱ぎ捨てたシャツで、グッタリとしているヒカルの身体を丁寧に拭いた。あちこち、
汗や精液でドロドロに汚れていた。
最初、ヒカルはされるがままだった。やがて、焦点の定まらない瞳に理性の光が戻り、
荒い息を吐いていた胸の鼓動が静まり始めると、ヒカルはシクシクと泣き始めた。
目から大粒の涙を流し、社から顔を背けるように泣いているヒカルを見て、罪悪感が芽生えた。
ヒカルは何度も「やめて」と頼んでいたのに、自分はそれを拒んだ。激情が去ってしまうと、
自分はとても残酷なことをしたのではないか思い始めた。
「……進藤…」
ヒカルに触れようと手を近づけたとき、その細い肩がビクリと揺れた。慌てて、手を
引っ込める。
「…スマン…堪忍な…」
触れることも出来ず、気の利いた言葉も出てこない。社はただ謝るだけしか出来なかった。
ヒカルは小さく首を振った。
「そやけど…オレ…本気で好きやねん……オマエのこと…」
身体を縮こまらせて、目の前の小さな少年は何度も首を振った。
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