戻り花火 4


(4)
今夜アキラが言葉少ななのは、美しい花火の短い命を惜しむためだけではないのだろうと
ヒカルは思った。
全てを忘れさせるような美しい光を瞳に映しながら、アキラの目はどこか遠い所を見ている。
遠い誰かの姿を幻のように、光と熱の中に追っている。
小さな炎がヒカルの胸の奥をもちろちろと焼いた。
胸の奥底で焦がれた火の粉が気管を通って口から出るように、ヒカルはつい言葉を洩らしていた。
「・・・社も、今日ここにいられれば良かったのにな」
他の人間ならきっと気づかないほどの一瞬の沈黙があって、それからアキラが小さな声で
「うん」と答えた。
二本の花火が同時に炎を宿し、精一杯に花開いて夜の暗闇を輝かせた。



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