嘆きの少年王・訂正編 4


(4)
略装に身を整えたアキラ王は早足で城内を抜け、用意させてあった愛馬へと向かう。
そして愛馬・ハマグリゴイシにひらりと跨ると、馬上からレッドに手を伸ばした。
レッドはその手を取ってアキラ王の後ろに同じように跨った。
「しっかりつかまって、レッド。飛ばすから。」
そしてアキラ王が愛馬にムチをくれると、ハマグリゴイシは大きくいなないて、それから
駆け出して行った。
二人を乗せた白馬は一路、撮影所へと急ぐ。
アキラ王は自分の腰にまわされたレッドの腕と、背中に押し付けられた彼の胸の鼓動を
感じていた。さきほど、中途半端に煽られた身体の芯が熱く疼く。このまま、撮影になど
行かず、レッドと二人でどこかへ消えてしまいたい。そう思った。
だが、そんな訳にはいかない。
帝国の王として、そして全国百万の読者の憧れを一身に担う身として、撮影をすっぽかす
ことなど、あってはならない。
アキラ王は身体の熱を持て余しながらも、撮影所へ向かって馬を走らせた。

撮影所の門を飛び越え、二人の人物を乗せた馬が表紙撮影用のセットの前でピタリと
止まった。息を飲むスタッフ達の前に、アキラ王が、続いてレッドが華麗な身のこなしで
馬上から降りた。
「遅れて、申し分け、ありません。」
息を切らせながら、アキラ王は撮影スタッフに頭を下げた。
「いや、ま、待ってたよ、塔矢くん。間に合ってよかった。とにかく、衣装に着替えてスタンバイ
してくれ。進藤くんも、着替えて他のメンバーを呼んできてくれるか?」
突然の登場に呆気に取られたスタッフはそれだけ言うのがやっとだった。



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