Shangri-La 4


(4)
そういえば、アルコールの味を覚えたのはこの部屋だったな。
――煙草も、キスも、オナニーも、セックスも。
イケナイコト、は、どれもこの部屋で覚えたんだっけ…。
アキラは、ぼんやりと昔を思い出していた。
どれも記憶に霞がかかり始めていて、遠い遠い昔の出来事のように思えた。
なんとなく投げやりな気分になり、グラスの残りを一気にあおった。
喉を焼かれる感触は久しぶりで、少し、むせた。
向こうの方から緒方さんの声が聞こえる。
内容はこの間の対局の話やおねーさん達
(アキラは緒方の周りの女性をこう呼んでいた)の話ばかりで、
しかも珍しいことに、緒方が一方的に話し続けている。
身構えていたアキラは少し安堵して、空いたグラスに注がれたジンを
また勢い良く飲み干す。
テーブルにグラスを置くと、緒方の顔が目の前にあった。
あ、いけない、と思ったがわずかに遅く、緒方に唇を塞がれソファに倒された。
激しく唇を貪られ、身体が一気に熱くなる。アキラは夢中で緒方のキスに溺れた。

アキラの手は無意識に緒方の股間へと伸びかけたが、
膨らんだその部分のほんの手前のところで、アキラはひらりと手を返した。
かろうじて残った理性が、これ以上先に進んではいけない、と警告している。
(きっと、緒方さんの熱さに触れてしまったら引き返せない…)
なおも緒方は激しく舌を絡め、アキラのシャツのボタンを外し、肌に手をかけた。
アキラは何度も緒方の下半身へと手を伸ばしかけては寸前で押し留め、を繰り返して
それでもなんとか踏みとどまっていた。



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