Shangri-La第2章 4
(4)
緒方とは何も話さなかった。ただ二人黙って暗い海を見ていた。
隣に誰かがいる。それだけでアキラには十分だった。
だから、帰ろうという緒方の言葉にどう反応していいか分からなかった。
ならば場所を変えよう、と促され、結局アキラは緒方の部屋に上がった。
緒方が出してきた、過去に飲みつけたミネラルウォーターのボトルを
アキラは黙って受け取った。
「緒方さん、ちょっと肩を貸して貰えますか」
返事を待たずにアキラは緒方の隣に座り、ボトルの蓋を開けて
半分くらいを勢い良く喉奥に流し込んでから、ゆっくり緒方に凭れ掛かった。
緒方の膝に手を置くと、ほどなくして緒方の手がアキラの頭に乗せられた。
その手の温かさと重みに安心して、アキラは目を閉じた。
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