白と黒の宴2 4


(4)
ただやはり今回負けて代表落ちしたことは社には相当こたえただろう。
組み合わせの不備とは言え、アキラは若干社が気の毒に思えた。
その時、越智が社との対戦を申し出た。彼のプライドの高さからしてその心情は容易に想像する事が出来た。
少なからず混乱が生じるかと思われたが、とりあえず棋院側と北斗杯関係者らで越智の主張を
受け入れるかの検討がされ、明日に対局が行われる事になった。
越智や社の今回の代表戦に対する意気込みがなみなみならぬものであったためだ。
人々が対局場から引き上げる中でアキラはいつの間にか社が周囲に居ない事に気付いた。
見回すとヒカルの姿もない。
まさか、と直感的なものを感じてアキラも慌ててそこを出て、二人を探した。

対局場から離れた廊下の奥で二人を見つけた。アキラは顔色を変えた。
社がヒカルを壁際に追い詰めるように立ち、ヒカルの顎を手で掬いあげ顔を寄せていたからだ。
「何をしているんだ!」
思わず叫んでいた。社が何かヒカルに因縁をつけているかと思った。
「あれ、塔矢。」
社の体の脇からひょっこりヒカルが顔を出した。社はちらりとこちらを見ただけだった。
「ほら、動いたらあかんて。」
そう言って社はヒカルの顔をぐいと自分に向かし直し、指でそおっと、ヒカルの目のところ触れる。
「んん…」
ヒカルも目を閉じて無防備に社に顔を預けている。アキラは呆然とそれを見つめる。
「とれた。しかしお前、ホント睫毛長いなあ。男にしとくの勿体無いわ。」



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