バレンタイン 4


(4)
いや、だが逢えただけでも。アキラがわざわざこのおでん臭いコンビニにまで逢いに来て
くれたことこそが宝だ。
俺はがっくりと落ちた肩の重みを感じつつも、アキラたんに笑顔を向けた。
「ああ、とっても美味しそうだねアキラたん」
アキラたんが選んでくれたと思うだけで、この真っ赤な包装紙も妙に高級感溢れるものに
思えてきてしまうから不思議だ。俺は礼を言ってポケットに入れる。
しかし、ポケットには他にいろいろ入っていてチョコレートの箱が納まるには窮屈だった。
俺はポケットの中に最初から入っていたいろいろをカウンターに置いていった。
キーホルダー、ライター。そしてレシート等等。
アキラはそのガラクタに呆れたようだったが、クスリと微笑んで、ポケットの奥にある
箱を取り出すのに躍起になった俺の腕をそっと掴んだ。
「あの、尚志さん?それは芦原さんにあげるもので、尚志さん用じゃないんですが」
アキラくんは床においていた紙袋から若干小ぶりの箱を差し出してきた。
「あなたには、これを」
「アキラたん……」
その茶色の包装紙は、コンビニで買えるようなものではなかった。
ほっそりした指に惹かれるように、俺はポケットから強引に箱ごと手をひき出した。
コトっというかすかな音に、アキラはカウンターの上に視線を投げた。
「それは……?」
その瞬間、微笑を浮かべていた目がキリキリと吊り上る。
「誰から告白されたんですか? ――尚志さん」



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル