昼食編 4
(4)
アキラの怒鳴り声は店内余す所無く響き渡った。
店内が静まり返ってしまった事にも、また、自分が店中の視線を集めている事にも、アキラは気付いていない。
(注目されるのに慣れているというのも、恐ろしいものかもしれない。)
もはや周囲は固唾を呑んで事の成り行きを見守っていた。
「キミはボクを馬鹿にしてるのか?からかってるつもりなのか?」
「何で…怒るんだよ。」
ムッとした顔で、ヒカルはアキラを見上げた。
「…キレイだって褒めたのに、なんで怒んの。」
「…っ……」
一瞬、言葉に詰まったアキラは、それでも何とか言い返そうとする。
「それじゃ…それじゃあ、何で笑うんだ…!」
「え…なんでって…なんかオマエがあんまり真剣っぽいからカワイイなー、と思って。」
「かっ、かわ……男に向かって可愛いなんていうな!」
「…だってホントにカワイイって思ったんだもん。」
ぎろりと睨みつけるアキラの視線をものともせずにヒカルは言う。
「やー、オレも気が付かなかったんだけどさー、塔矢って結構カワイイよなー。うん。
そうやってすぐ怒鳴るのも怖えと思ってたけど、カワイイ奴ー、って思えばヘイキだし。」
「…やっぱり、からかってるんじゃないか…っ!」
――やっぱりカワイイぞ。すげえカワイイぞ。どうしよう、オレ。
塔矢がこんなにカワイイ奴だなんて、知らなかった。
なんかこれって…ちょいヤバくねぇ?
などと妙に浮かれた気分でアキラを見ていることなんて、アキラが気付くはずも無い。
返す言葉を見つけられずにいるアキラを、にこにこ笑いながら見ていたヒカルだが、突然、壁面の
時計が目に入った。
「あ、ヤベェ、もう時間じゃん。行くぞ。」
慌ててヒカルは立ち上がり、リュックを肩にかけ卓上の伝票を手に、出入り口へ向かう。
「え………進藤、待て…!」
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