裏階段 三谷編 4


(4)
「別にそれを見たから吸いたくなったというわけじゃない。」
口にしてから、少し酷だったかなと思った。だが彼は特に気にした様子はなかった。
首に巻き付いて来た彼の腕はひんやりとしたいた。
背中に押し充てられた胴体からかろうじて体熱が伝わって来る。
「誤解しないで欲しいんだけどさあ、」
耳元に億劫そうなけだるい口調の声で囁かれる。
「相手は誰だってよかったんだ。」
「そう言ってもらえるとこっちも気が楽だ。」
腕を伸ばしてまだ幾らも長さを変えていない煙草を灰皿に押し付け、眼鏡を外してその横に置く。
彼の方に向き直り痩せた肩を両手で抱き唇を奪う。彼の手がこちらの首元に来てネクタイを外す。
「…フン」
鼻先で笑い、戦利品のように彼は奪ったネクタイを指先に絡めてかかげ、ベッドの脇の床に落とした。
お返しに彼の体を倒してやや乱暴に彼の衣服を剥ぎ取る。
煙草が押し付けられた痕は他に下腹部に数カ所あった。その中の2ケ所は、まだ幼さの形状を残す
局部の付け根近くと先端部分にあった。
それらに視線を留めないようにして彼の体の各箇所にキスを重ねた。



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