浴衣 4


(4)
「アキラさん、折角お父様が持ってきてくださったんですもの、着ていったらいかが?」
「え、でも…」
僕はチラッと進藤を盗み見た。しかし、進藤は子供のように目を輝かせて、黒と紺の浴衣を眺めている。残念ながら、僕のSOSに気づかないどころか、とどめを刺してくる。
「そうだよ、塔矢。着てみろよ」
「そうだわ、進藤君。あなたも着てみない? アキラのが他にもあるのよ」
「いや、俺…じゃない僕は普段和服着なれてないから……」
慌てて手を振り断る進藤に、父まで微笑んでいる。
彼がいるだけで、賑やかになる。
それは、進藤の持つ独特の空気なんだろうと、僕は思う。


6時半までに帰っていらっしゃいという母の声に送られて、僕たちは家を後にした。
角を曲がり大通りにでると、進藤が尋ねてきた。
「暑くないか?」
「浴衣?」
「うん」
「君に比べたら、暑いだろうね」
嫌味を聞かせる。
だってね、進藤はアロハにハーフパンツだよ。僕より暑いはずがない。
僕の嫌味に、進藤は困ったように片頬だけで笑って見せた。
「凄い似合ってる」
まいった。
進藤は言葉を惜しまない。
彼が誉めているときは、心から誉めているんだ。
「あ……、ありがとう」
僕は口篭もってしまった。女の子じゃないんだから、着てるものを誉められてもね。
似合うといえば、今日の進藤の格好も似合っているというか、彼らしいというか。
赤いアロハは、白い花の模様が涼しげで、そのなかに着ているTシャツは真っ白で清潔感があった。



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