残像 4
(4)
だから、ボクは考えなきゃいけない。
ボクはどこへ向かうのか。ボクはどこを目指すのか。
キミを追っていくだけなんて、ボクは嫌だ。
キミじゃない。昔みたキミの中のsaiじゃない。お父さんでも、ない。
目指すものがあるとしたら、それは―それはボクだ。他の誰でもない、ボクだ。
他の誰も、もう、ボクの目標にはなり得ない。
そうだ。ずっと長い間ボクの憧れだったお父さんだって、それが最終地点じゃない。
ボクは知ってたはずだ。
あの道標に向かって、真っ直ぐに歩いていけばいいと。それは間違ってはいなかったと思うけど、
でもそこが最後の目標じゃない。ボクはそこに辿り着き、そして更にそこを超えてみせる。
お父さん、あなたに辿り着く事がボクの目標じゃない。そしてあなたを超える事も、ボクの目標
じゃあ、ない。ボクの目指すものは更にそのずっと先にある。
そしてきっと、お父さんも、同じようにそこを目指している。そうでしょう?
そしてキミが目指すものもきっと同じなはずだ、進藤。
それはキミが「神の一手」と呼ぶもの。そうじゃないか?
そうか、今わかったよ。
ボクはキミに気をとられすぎて、足元を見失っていたんだ。
キミに。キミの中のsaiに。
今は―多分、もういない人の残像に。
多分、キミをあんまり好きになってしまったから。
でも、だからもう、ボクはこのままここに立ち止まったりなんか、しない。
キミに置いてかれたりなんか、するもんか。それどころか、ずっと前を行ってやる。
ボクに追いつき、追い越すのが目標だと、もう一度キミに言わせてみせる。
キミの目標はボクだ。キミのライバルは、ボクだ。他のヤツなんかじゃない。
もう一度、キミにそう認めさせてみせる。
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